航空機関連尾受注を2割から8割へと激増させた各務原市の徳田工業。新日本工機の「横型5軸プロファイラ」を駆使する。部品メーカーへの脱皮目指す。

徳田工業株式会社

徳田工業株式会社

横型五軸プロファイラHPS‐150B 手前には自作のパレットストッカー

岐阜県各務原市に本社を置く徳田工業を訪問した。

徳田工業は、各務原市の本社工場の他、可児工業団地に二つの工場を保有する。可児工場、可児第二工場ともに工場内に設置されているマシンはほとんどマシニングセンタ。ここでは航空機の機構造部品の切削加工が行われている。

現在、複数の国内航空機メーカーから受注する旅客機や防衛省機の機構造部品の製造をはじめ、航空機用治工具、風洞試験模型、実大模型等の航空機関連製品の他、自動車部品の検査治具、成形型等を手掛ける。航空機の機構造部品のみで売上の5割、航空機関連製品を含めると8割を占める。

「可児工場だけでは手狭となってきたため、本社工場のスペースをこじ開け2台の大型マシニングセンタを設置した。ここでも航空機の機構造部品の加工を行っている」と、徳田泰昭社長が語るように、航空機部品の製造は、ここ20年で大きく躍進した。

航空機部品の製造に関しては、「うちは後発組。だから、他人がやっていることはやりたくないし、少々リスキーなことでも挑戦する」と、自社のスタンスを語る。

徳田工業は、昭和23年に鋳造用木型の製造で創業。「創業者である父は床屋の次男坊。就職先で木型に出会って1年程で退職し、木型職人に弟子入りする。その後、独立して掘建小屋で木型を製造したのが始まり」だという。営業で鋳物屋を周る中、現在の取引先である航空機メーカーの下請工場の仕事を受注し、昭和28年頃から、同メーカーの依頼で航空機部品のマスターモデルの製造を始めた。その後、風洞試験用の航空機のミニチュアや実物大模型の製造も受注するようになった。

さらに、航空機で培かったノウハウを活かし、自動車部品メーカーの依頼の下、自動車内装部品のマスターモデルの製造も開始する。「自動車部品のマスターモデルの製造は、自動車メーカーのデザイン承認をもらうのが最大の難所。承認を得るまでは、何度も修正を重ねる。私自身、人気スポーツカーのバンパーのマスターモデルを製作した」と、徳田社長は当時を振り返る。 窮地からの大躍進  ところが、創業50周年を迎える頃、3次元CADの出現により、マスターモデルはマスターデータに取って代り、徳田工業としてもマスターモデルでは、生き残れない時代を迎える。

「窮地ではあったが、今に至る転換期でもあった」と、徳田社長が語るように、この頃から、航空機部品の製造へ方向転換する。元々マスターモデルを通して、航空機部品に携わっていた徳田工業にとっては、部品加工への転換は自然の流れだった。

時を同じくして、航空機の製造方法も板金・組立から削り出しへと移行。

「航空機の部品製造への転換を決めたとき、横型のマシニングセンタの設備を検討した」という。当時は、門型が一般的で横型は珍しかった。導入を相談した先からも横型への反対意見は少なくなかった。  それでも、横型にこだわったのは、切屑の処理が不要なため無人稼働できる点にあったこと、そして何より、「後発だから他人のマネはしたくない」との思いがあった。

そこで、新日本工機に航空機部品の加工をする旨相談を持ちかけたところ、「横型五軸プロファイラをカスタマイズして作ってくれた」そうだ。

平成9年に4mストローク・ツーパレットを搭載した横型五軸プロファイラを導入したのをきっかけに、10mも導入。最近では、横型五軸プロファイラHPS‐150Bを本社工場に設備した。  徳田社長は、「新日本工機さんには、毎回カスタマイズして作ってもらっている。中でも、HPS‐150Bは完成度が高い」と評価する。また、「うちでは、横型五軸プロファイラが主力となっている。これなくして、航空機の部品加工はできない」と、貢献度の大きさを語る。

徳田工業は、横型マシニングセンタを駆使し、航空機の機体構造部品の加工で実績を積み上げていく。

平成19年には、チタンの切削の研究で補助金を獲得。当時はなかったチタン用切削工具を開発し、旅客機の機体構造部品の受注を獲得した。この成果を引っ提げ、他の航空機メーカーの受注も獲得。「20年前は航空機関連の仕事は2割だったが、今では逆転している」と、窮地から大きく躍進する。

また、複合機と、ロボットをベースとした二種類の特殊なマシニングセンタを開発し特許も取得。「一言でいえば、『治具レス+切り落とし』。つまり、加工後に製品の切り落としができ、切り落とし後はワークを押し出すため、把握していた部分が製品となる。これにより段取りの手間を省き、ワークも無駄なく使うことができる。この加工方法はうちの独自の技術」と、徳田社長は強調する。このマシニングセンタの開発も「他人がやらないことを」との思いが根底にあった。

こうした研究開発の実績が評価され、平成21年に中小企業庁より「元気なモノ作り300選」に選出された。

徳田社長に今後の展望を伺った。「この20年間で航空機の部品加工という柱が立てることができた。今後は、加工屋から部品メーカーを目指す。そのためにクリアしなければならない課題は多いが、実現したい」と、徳田工業の挑戦は続く。

 

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徳田泰昭社長