東陽新社長記者会見・経営報告会開催。最大の関心事はEV化の流れとトヨタ自動車の生産台数

株式会社東陽

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羽賀会長(左)とともに記者会見の場に姿を見せ、質問に応える羽賀威一郎社長

東陽は昨年10月に急逝した、故羽賀象二郎前社長の月命日にあたる2月24日、名古屋観光ホテルで、羽賀会長、羽賀威一郎新社長による記者会見、引き続いて仕入れ先各社を前に経営報告会を実施した。

 記者会見に姿を現した羽賀会長は「前社長が急逝し、悲しみに沈んだ。会社としても、まさか52歳の若さで社長を失うとは思っていなかった。全体を見渡してみたが、人材が育っていない面は否定できず、私の長男しかいないとの結論に達し、社長就任を打診した」との経緯を語った。
 長男である羽賀威一郎社長就任が決まったのは、1月9日の取締役会においてだった。
 就任の社内あいさつで羽賀新社長は「社員のモチベーションこそが会社の宝であり、これまで通り、信じてきたことをやっていって欲しいと訴えた。やり方は変えないとも話した」とし「実際に顧客を回り始めてみると(東陽さんには)提案営業が根付いており、そこに助けられているとの言葉を頂戴した。弊社の売り上げ、収益を概観しても、前社長の方針が間違っていなかったことが確認できる。当面、少なくとも、1年間は、従来からの方針を踏襲していき、前社長の意志を発展させていきたい」との考えを語った。
 東陽が向き合う自動車産業は、EV化が本格的に始まろうとする、変革期を迎えている。
 「ある商材は通用しなくなり、ある部品は不要になってくる。弊社としてはトヨタ自動車の生産体制がどのように変わっていくかに応じて、機微に動いて必要な情報をいち早く入手し、適切な提案を随時行っていくことでEV化に備えたい」。
 トヨタ自動車からは今年、国内外合わせ1060万台を上限に生産を展開していくことが公表されている。
 「国内はもとより、世界9カ国でグローバル生産に対応する弊社の海外拠点網が、他社との差別化に大きく寄与していると思う。海外においても、複数のスタッフによって、顧客の工場のフォローを展開しているばかりか、痒い所に手が届くような、貴重な海外情報を提供して頂いているとの話も伺っている」との羽賀新社長の言葉を接いで、羽賀会長は「一般的な営業の経験を経て海外に出す。そして(国内に)戻す。国内外の営業を経験していることが弊社の強みだ」と補足した。
 今期の売り上げは単体で950億円、海外入れた連結で1230億円の「着地」を予定。(新収益認識基準適用前)
 羽賀会長は「工具関係は順調だが、工作機械など設備関連は苦戦している」と説明した。
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 記者会見後の仕入れ先各社を前にした経営報告会で羽賀会長は「2027年には売り上げ2000億円、世界に10か所の新拠点を開設し、M&Aによって新規分野を開拓し、チームワークで組織的な活動を展開していく。今後とも、皆様の商品を販売していくのに使いやすい商社だと御評価いただき、賛同頂ければ」と訴えつつ「アイシン、デンソーの長期計画を研究しつつ、社内で話し合い、実施に移していきたい」との考えを示した。
 羽賀新社長からは「私は1968年1月生まれの55歳。アメリカのボストン大学を卒業し、丸紅のエネルギー部門に従事。2003年に退職し、その後、東陽の靴を輸入する会社に入社し、運営する立場となって経験を積んできた」と自己紹介するとともに「皆様からの技術的サポート、ノウハウを組み入れ、提案営業に活かしていきたい」と協力を訴えた。
 座右の銘は雲外蒼天。努力して困難を克服することによって、心地よい空が望める、とのことだ。
 近藤副社長からは「今期、東陽単体で売り上げ1000億円弱、連結で1200億円」(新収益認識基準適用前)との今期見込みに改めて言及されたほか、詳細な海外拠点の動向や各国の自動車販売状況が報告された。

 「TOYOグリーンキャンペーン2023」を実施
 3月23、24の両日には「TOYOグリーンキャンペーン2023」として、76社の出展メーカーの賛同を得て、東陽の展示会が復活。羽賀新社長にとっても、初の経験となった(詳細は次号、4月号で)