碌々産業がJIMTOF で複合微細加工のコンセプト機を出展
時計のトークセッションも企画

碌々産業株式会社

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海藤社長とMega

碌々産業JIMTOFブースに海藤社長を訪ね、出展ポイントをはじめ、現在の関心事や問題意識等について、率直な意見を聞いてみた。

 JIMTOF会期中は来場者が絶えなかった碌々産業。装飾の点では「よりブラックに」をテーマに掲げた。
 「ブランドイメージの確立に向けて取り組んできたが、色彩的には、2014年以降、ブラックに差し色としてレッドを配する傾向が強まってきた」と言う。
 複合微細加工への挑戦として、初出展されたコンセプト機「MEGAⅦ」も、マットブラックが基調だ。
 「弊社の考えばかりか、訪問先の現場でヒアリングを重ねてきて、マシニングアーティストの心に響いたカラー。かっこいいとの評価を頂いている」。
 機能面でのコンセプト機の特徴は、切削、研削、へールといった複合的な微細加工の領域に新たに踏み込んでいくことにある。
 箱型デザインを踏襲した高級鋳鉄製ベッドは重量増を図り(120%)、高速位置決め時の安定性向上と更なる高剛性化に寄与していく。
 「全面リブ構造の採用も、長期にわたる高精度、高速位置決め能力の確保に貢献する。これらの狙いは、どのような過酷な条件下でも、基本剛性と安定性の両立を確保していくことにある。これから微細加工を始めようという来場者からは、いつかは欲しい・・などといったご意見や感想を頂戴した」。
 9月~11月の受注状況は110%、受注残が積み上がってきている。
 「半導体関連需要は落ちていない。産業の『米』であり、色んな要素が絡み合うが、中国による2025年までの半導体産業の国産化等については注目していきたい」。
 好調を継続する機種のひとつは「Vision」。完全鏡面加工をテーマに掲げる。
 「鏡面を必要とするレンズ金型をはじめ、マイクロ流路の確保や車のギアの摩擦音解消といったニーズに、ずばりお応えすることができる」。
 もちろん、荒から中仕上げ、仕上げまでを1台で完結できる魅力は大きいだろう。

碌々産業は、JIMTOF会期中の11月11日、独立時計師の浅岡肇さんと腕時計製造販売会社を運営する飛田直哉さんとのトークセッションを企画。「好きを仕事にする」体現者としての魅力が会場を包んだ。


 浅岡さんは令和4年度版の「現代の名工」を受賞したばかり。独立時計師初であり、トークセッションに文字通り花を添えての登場となった。
 腕時計には駆動方式を巡り、電池式(クォーツ)、機械式(手巻き、自動巻き)、ソーラー式、電波式等があるが、トークセッションの対象は機械式の腕時計。
 浅岡さんはデザイナーとして、腕時計作りに関わっていたが「リーマンショックで仕事が暇になり、モチベーションを上げるために、トゥールビヨンのムーブメント時計作りに挑戦した」。2009年のことで、もちろん、日本初だったが「トゥ―ルビヨンを完成させることが目的だったので、当初は売り物ではなかった」そうだ。
 一方、飛田さんは、世界にはどのような時計があるのか?との関心を抱いて「販売するプロ」を志向。仲間とともに日本限定の企画やデザインに取り組み、次々とヒットさせていく。
 時計ファン、時計師の卵に伝えたいこととして浅岡さんは「作ること自体を目標にしない方がいい。理想を純粋に追求することだ」としつつ「腕時計への引き合いは、インスタやフェイスブック、ユーチューブといったSNSを介する場合が多い」とのビジネスでの感触を語り、飛田さんは「トランクショーを通じたPRによって、直売することも多い。仕事の80%が海外で占める」との実情に触れた。
 また、浅岡さんは「若い人は時間がある。中途半端なものを作ってはいけない。方向性を煮詰めていくためにも(時計の)コレクターとの接触も大切」などと語った。
 時計を構成する部品をほとんど自前で製作する浅岡さんは、碌々産業の微細加工機のユーザーでもある。
 「MEGAはまさに独立時計師のためのマシンだと思う。腕時計の根幹を成す歯車や地板、テンプルといった部品製作では、マシン自体の温度管理が極めて重要になるが、熱変位にとても強い構造を採用している」との使う立場に立ったコメントも。
 ただ、仕上げとなる組み立てについて「無事故で組み上げていく作業の連続。大変な労力が伴う」との感想に「斬新さ」を感じた。

浅岡肇さん(左)と飛田直哉さんによるトークセッション。「作りたいものを作る」ことと「ビジネス」の両立
浅岡肇さん(左)と飛田直哉さんによるトークセッション
「作りたいものを作る」ことと「ビジネス」の両立