7月のハノイに営業事務所を設立した静岡の石川工具研磨製作所。 現地日系メーカーからの特殊工具ニーズをさらに発掘する。

株式会社 石川工具研磨製作所

株式会社 石川工具研磨製作所

気合い十分のフンさん

石川工具研磨製作所が7月1日付でベトナム事務所(ハノイ)を開設し、従来から取引のある現地日系企業のフォロー強化を追求する一方、新たな需要の発掘に乗り出した。石川直明社長の訪越に合わせ、本紙もハノイへ移動、現地で営業活動を担うグエン・ヴァン・フンさんに面談し、個人的なプロフィールも交え、今後のアプローチにスポットを当ててみた。

石川工具研磨製作所で3年前からスタートさせたベトナム人技能実習生の一期生に当たるフンさん。ハノイで面談して採用されたのが2013年になる。

「ベトナムにいた多感な時代、アメリカと日本、それぞれ経済的な発展が高い国を志向していた。何年間か、勉強して、帰国し、成果を自分の国に還元できれば、との思いがあった」。

そして日本を選択、石川工具研磨製作所に入り、機械加工の扉を叩くことになる。

「日本人の仕事への取り組みを身近に見て『(自分には)難しい』と思う側面もあったが、発想を変え、チャレンジしていくことで自らの成長があると考えるようになっていった」そうだ。日本語も、ほぼ独学で体得、会話能力はもちろん、読解力も高い。

ホーチミンにも石川工具研磨の顧客はいるが、フンさんの現時点での営業範囲は、ハノイを中心にして半径100圏内、ホーチミンは月1回程度だと言う。

「日本製工具を使用したいとのニーズに対応して訪問。図面を頂いて見積もりを出し、注文へと漕ぎつく。ベトナム市場では、現地日系企業を中心とする特殊工具づくりで、成果を積み上げていきたいと考えている」。

ユーザーサイドでの品質の比較対象となると、日系と台湾製工具が多い。品質の安定性、工具寿命が評価されるポイントになる。顧客は、部品加工関連はじめ、OA機器や金型関連など多岐にわたる。

「新規のアプローチでは、たとえば、インターネットで調べて、どのようなものづくりをしているか、切削工具の使用状況はどうか、把握してから検討していく。ターゲットを定めれば、まずは電話連絡。何回も断られながらも、再研磨でテスト加工することも『ネタ』に、使ってみた感触を踏まえながら、見積りを提示、商談へと繋げていく。工具寿命の長さでポイントが高い」そうだ。  ローカル、日系双方の商社を通じた日系ユーザー訪問も追求している。

「切削工具で不具合が発生すれば、日本本社で原因を究明する。ベトナムで事業所を開設したメリットである『即応』を最大限活用していきたい。本社の社長、専務が交互に来越し、『援護射撃』もある。ベトナム人同士の意思疎通も活かしていきたい」。

特殊工具と言えど、生産ラインに採用されれば、50本程度の受注も具体化する。

「1日、2〜3件を基本に営業活動に出ている。もうすぐ自動車免許も取得できるので、そうなると、行動範囲も広がってくる」。  開設された事務所には、自宅からバイクで通う。

最後に石川直明社長に意見を求めた。

「国内取引が今後、減少傾向を辿っていくことを考慮すると、海外に出ていく仕事を追いかけていくことは重要になる。軸足は国内にあるものの、『ベトナム』という切り口で仕事を請け負うばかりか、情報を入手していくメリットは大きい」。

 

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オフィスからは眼下に日本大使館が見える(手前の低層棟)

 

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新規開拓にはインターネットで調べて、切削工具の使用状況を調べ、打診する

 

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石川直明社長