5軸マシニングセンタ「PX30i」登場、「YMC650」は浸透さらに‐安田工業

安田工業株式会社

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安田工業梶原部長

 

  •  上半期を振り返って、梶原治国内営業部長は「売上は前年並み。お蔭さまで『YMC430』が好調です」と言う。
  •  確かに「YMC430」は魅力的だ。2009年、リニアモーター駆動の微細加工機として登場して以来、ボールねじ駆動機械に対する不満と、既存のリニアモーター駆動機械に飽き足らぬユーザーの「乗換え需要」に応える形で、特に中国を中心とする東南アジア向けに売上げを伸ばしてきた。
  •  こうした「乗換え需要」増の背景には、例えば、近年のデジタルカメラの画素数に見るとおり、製品そのもののハイレベル化がある。製品を支える光学系部品も必然的に高度化し、「YMC430」はこうした新しい仕事に照応する機械として市場へ投入されたのであった。
  •  発売後8年が経ち、今や同社の「顔」として定着している。
  •  梶原部長は「高精度対応機種でありながら、このサイズにしては剛性を持ち合わせ、しかも、その高精度を長期間安定的に維持できる点が特長」とし、長時間加工を要する医療機器や光学系部品に新たなマーケットを見出している。
  •  微細加工機「YMC430」に先行する「YBM640V」「YBM950V」も、高硬度の大型金型へのダイナミックな直彫りにアドバンテージがあり、継続して需要は高い。両者は、市場による「選別」がなされているということになろうか。

 

  • ■大量生産型機種「PX30i」で新たな顧客を獲得か  ワン・チャッキングで多面加工ができ、長時間無人対応が可能な5軸マシニングセンタ「PX30i」は、大量生産型機種として海外向けに発表された、同社では異色といえる戦略機種である。無人化で同じ部品を大量に、あるいは、異なる部品でも繰り返し増産したいユーザー向けであったが、このほど国内向けに生産環境が整った。今回のメカトロテックでは新たな需要層を掘り起こしたい考えだ。

 

  • ■「YMC430」+RT10と「YMC650」+RT20  「RT」はロータリテーブルのこと。ボールねじ駆動による仕事に限界が生じ、リニアモーター駆動で解決を試みた。ところが、微細加工を施すべきワークが大型化し積載加重が増えると、機械本体を大型化させて対応することになる。付随的に、ロータリテーブルも「RT20」でひとまわり大きくした。今後も大きなストレージの微細加工が見込まれており、事によっては「RT30」登場も可能性としてゼロではないだろう。

 

  •  5軸マシニングセンタが堅調に伸びており、同社は引き続き業績の好調推移を予測するなか、大型化するワークも視野に入れつつ、高精度を長期間安定的に維持可能なメリットを生かせる新たなマーケットに向けて「YMC650」を投入していきたい考えがある。「YMC450」の特長を引き継ぎ、ストロークを拡張させたタイプになる。
  •  2020年の東京五輪を契機として、産業界の多くのシーンでAIの進展が予測される。「例えば、EVカー。要となる電子系部品を生み出す加工技術は必然的に水準の高いものが求められます。超過勤務を厭わなかった昔とは違います。限られた時間内で、職人技に匹敵する技量をもった機械を提供して貢献していきたいと思います」。

 

  •  量産の時代は終わった。今後は精度面での競争が加速するだろう。あらゆるメーカーが市場ニーズに応える形で先進的な機械を投入し、様子を見ながら見直しを行っている。日本のお家芸である「ものづくり」の真価が問われているのだ。