来年設立10周年を迎えるフジ矢ベトナム工場。製造品目は200アイテム、月産6万丁と日本と同等の生産を誇るまでに成長してる。
ベトナムで製造しているペンチ・ニッパを手に取る小谷社長。22アイテムに上っている
フジ矢のベトナム工場設立から来年で10周年という節目を迎える。
「2007年3月にフジ矢独資で設立し、翌年3月からレンタル工場で操業を開始。4年後の2012年5月に新築・移転し、新工場を稼働させた。当初のここでの作業は、刃付け、研磨に限定されていたが、今はほぼ全工程を手がける」との経緯を小谷社長は語る。
6時から14時、14時から22時までの「2勤」体制で、リーダー格の10人を核に、およそ100人が働く。ペンチ・ニッパ類の生産が中心で、およそ200アイテム、月産で6万丁と日本本社に匹敵する規模にまで成長を遂げている。
操業当初から、現地調達率を徐々に上げていく努力を重ね、今では、要のひとつである鍛造品は8割~9割に及んでいる。
「完成品、半製品を日本だけでなく台湾にも輸出している。また、ベトナムでの販売を強化するため、政府の認可を得て、2014年にホーチミン市内に営業所を開設。ローカル・日系の代理店を通じた販売をはじめ、地元の『パパ・ママ・ストア』やイオンモール、コーナンといったホームセンターなどを活用して販路を広げてきている」。
販売面では、ペンチ・ニッパのみならず、モンキーレンチ、スパナ、ドライバーなど、ハンドツール全般を取り扱う。
「設立から3年目で黒字転化したことに、お褒めの言葉を頂戴することがあるが、現在、ベトナムでは最低賃金がどんどん上昇しており、これに連れて賃金もここ3年間、年率で13%から14%アップし、取り巻く労働環境そのものは厳しくなってきている。離職率も高い。だが、幸いなことに、中心となるスタッフが定着し、当社の成長を担ってくれている。日本人が現場にいなくとも、生産性が落ちることがない。大きな財産だ」。
スタッフの平均年齢は27歳。高齢化が進む日本とは対照的だ。 「日本本社は、マザー工場としての役割を担っていくことが今後も重要になる。昨年M&Aをかけ、協業することになった花園工具との連携の在り方も課題になってくるだろう」。
フジ矢のベトナム進出の背景には、2002年からのベトナム人研修生の受け入れを推し進めるなか、技能・技術の習得も早かったことやベトナムの政治の安定性が大きな理由として挙げられた。
「もっとリアルに申し上げると、優秀なベトナム人研修生がおり、その後、ベトナムに戻って自宅で研磨・刃付け作業を手がけ、実質的な立ち上げを担ってくれたことが大きい」との「個人力」の側面にも小谷社長は言及してくれた。
フジ矢のベトナム工場外観
ホーチミンにあるイオンモール4号店
コーナン内に設置されている「フジ矢」コーナー