価格改訂も「面倒を価値に変える」精神で取り組むサイトウ製作所・齋藤社長
齋藤社長(角田工場前で)
生活必需品を筆頭に、工業界でも様々な価格の改定が相次いでいる。
齋藤社長は「立場によって、価格改定の交渉テーブルを用意する側とされる側に分かれる。すでに仕入れ関係において、用意される側の立場に立つことになったが、そこでの交渉を通じて、仕入先の製品別の売上構成や利益率の分布などが分かった気がする」と言う。
購入する立場で得た情報や感覚を、今度は販売する立場の交渉に活かす事ができる。
「価格と一口に言っても流通各社とメーカーではそれぞれの利益の成り立ちも違う。価格改定は適正な利益の確保が目的でも、シェアを失ってしまえば元も子もない」「今回の価格改定の機会は、営業管轄の単なる売値の改定という次元ではなく、会社の社員一人一人の生活をどうして行きたいのかという自分事、会社全体の事として取り組む事を第一に考えている」と続ける。
サイトウ製作所は、今期で88周年、現社長で13年目を迎えた。
「小粒でも、存在感のある企業を目指してきた。小径精密工具を作っていくうえで、大改革よりも、受け継がれてきた蓄積の果たす役割に重きを置いてきた」「私が社長を継承して以来、角田工場は、地震などの自然災害に、度々見舞われたが、スタッフの力で乗り越えてきた。それは自分達の自信に繋がり、大きな財産になっている」と指摘する。
「面倒を価値に変える」力が徐々に付いてきていると齋藤社長は自己評価しつつ「今後、技術力・生産力だけでない自分事力を、ものづくりの領域外でも適用できる武器となるようにしていきたい」と胸を膨らませる。
ここ数年繰り返される様々な変化に自力で対応し力を付けて来た今、工具の価格改定を巡る問題も同様のスタンスで乗り切り、人の成長も期待できるとすれば、これに勝るものはないだろう。