安田工業YBM Vi40で「不可能だった加工が可能に」。自動車のエンジン、ミッションの金型部品で躍進する鈴木精機(愛知・西尾市)
鈴木社長
自動車のエンジンやミッションの金型部品づくりで躍進する鈴木精機を訪問。現場の多能工化を進め、稼働率アップを推進していく一方、安田工業製5軸加工機のオペレーターで半数近くを占める体制を敷く。創業者の鈴木喜公於社長に面談し、設備の可能性と受注における差別化のポイント等をヒアリングし、紙面化を試みた。
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鈴木社長は、地元の大手自動車メーカーT社から1991年に独立、ダイキャスト金型部品づくりで起業した。
「バブルが弾け、要望されたのが製品単価の引き下げだった。出身企業だけに、細部にわたるニーズへの理解も十分でき、寿命やコストに関する提言に努め、即応していく中で仕事量を拡大。2005年には、中国・広州にも生産拠点を立ち上げ、以降、日本、中国の両拠点でT社に対するダイキャスト金型部品づくりを展開してきた」と語る。
その実力は折り紙付きで、最新の動向を紹介すれば、T社が2023年9月から日本とアメリカで新しいエンジンの生産をスタートさせたが、その一翼を担うプロジェクトの受注に成功している。
「生産開始から現時点でわずか3カ月に過ぎないが、2023年が過去最高の売り上げを記録したのも、このプロジェクトの恩恵による。形状が複雑で、寸法精度も厳しい、付加価値の高い金型部品。ボリュームも大きい」。
今年もプロジェクトは継続されると言う。鈴木精機のQCDのレベルに一段と拍車がかかっていくのは間違いないだろう。
ところで安田工業との付き合いが本格化したのは2015年のVi40導入に始まる。
「ミッションの心臓部の高硬度鋼部品で、0・015ミリの公差内に収める必要があった。他社製のマシニングセンタでトライしてきたが、なかなか寸法内に入らず、何回も載せ替える必要が出てきて、納期が読めなくなってくる。苦慮した結果、5軸加工機のVi40でテスト加工を実施。一発で公差内に収まり、顧客ニーズを難なくクリア。驚くほかなかった」そうだ。
今ではVi40は5台にまで増設されている。
「5軸加工機の魅力のひとつは、加工時間の短縮。掴み替えがなく、芯ずれも発生しないため、面粗度も高くなる。しかも工具代の節約にも繋がる。ポイントとなるのが治具づくりだろうか。試作でも多用している」。
昨年2月には、安田工業の新製品となるVi50のモニターユーザーに選ばれ、世界最初のユーザーとなった。
「ストロークが拡大したので、より大きなワークへの対応が可能となり、プロジェクトにも貢献している。20時間~30時間の連続稼働は『当たり前』で、70時間の実績もある。オペレーターの技能アップのために奨励金を出して、能力アップを後押ししたりもしている」。
因みにモニター機は間もなく返却し、2月からはVi50を新たに購入する計画だ。
現場では多能工化を推進し、効率アップと同時に週休3日を実現。最近の数年間でペーパーレス化も推し進めており、端末で作業指示書を共有、不良低減にも繋がっていると言う。製品は全数検査を実施している。
また、工具費は、月間数百万円と馬鹿にならず、対応として最近では、中国工場で試した中国製工具の採用率が高まってきた。日本製工具と比較しても、その品質は劣らない。価格も半額以下だと言う。
「今後は、EVを視野に入れたギガキャストへの対応も、試作段階から関わっていく」ビジョンにも触れてもらった。
高精度3次元測定機を導入。全数検査を実施している。