「工具再研磨と事業承継」テーマに石川工具研磨製作所訪問。来年1月には石川社長誕生10周年

石川工具研磨製作所

石川工具研磨製作所

石川社長

人手不足と並び、ものづくり企業で課題に挙がっている事業承継という関心で、石川工具研磨製作所の石川直明社長、石川正次相談役を訪問した。
 今年、3月21日付で創業者の石川正次会長が相談役となった。
 石川直明社長は「代表取締役は私一人となり、石川会長との『併走』から『独走』状態となった。見える視点が変わると、見える先が変わってくる。最終的には自らの責任と権限で決定することとなり、相談役は、文字通り、相談を仰ぐ対象となった」と直近の3カ月を振り返る。
 1983年1月、石川研磨として工具の再研磨事業をスタートさせたが、石川相談役は「当初より、事業承継のことは考えてきた」と語りつつ「何をどのように残していくか。創業者の立場から見れば、社業の歩みの中で、どのような遺伝子を社内で培養していくかという関心でもあった」と語る。
 工具研削のCNC化は、再研磨業界でも早く、1990年には、第一号として牧野フライス精機の「CNⅡ‐25」を現場に据えていた。
 「手作業からNCへの置き換えは、(使用工具の)カケが取れるプラスα以上の成果をもたらし、再研磨されたエンドミルで、新品同様の精度が出せるかどうかが問われるニーズに即応していった。ボールの精度で表現すれば、当時+-100分の2から+-100分の1への対応となる」(石川会長)そうだ。
 石川社長は1998年から2年間、牧野フライス精機で「修行を積み」、2000年に石川工具研磨製作所に入社した。
 「相談役からは、日ごろから、形状や挽き目等について、常に他社よりも先んじている必要がある、との指南を受けていた。入社からほどなくして社会ではリサイクル熱が高まりを見せ、業界では工具の再研磨として『ブーム』が到来したが、弊社は、その頃には工具製造にも着手し、新たなノウハウを蓄積していくなかで、再研磨にも活かされるようになってきた。工具再研磨と工具製造は補完し合いながら技術の向上を図ることができる。他社に先んじる経験だったとも言えるだろうか」と石川社長は自問する。
 2010年8月には、分散していた工場を集約するため、現在の鉄工団地への移転を相談役が決定した。
 「リーマンショックからの回復が見え始めた頃ではあったが、一時は仕事量が半減まで落ち込んだことを思うと、この時の相談役による移転の決断はベストタイミングだと思った。もし私だったらその判断ができただろうか?」との石川社長に対し、石川相談役は「移転の決定は仕事の快適環境のタイミングとして、相応しいと考えてのことだった」と応える。
 そうして、2015年1月には「石川社長」が誕生した。
 「早いもので来年1月には社長就任10周年、在職25年という節目を迎える。最近になって、昨年来の種まきが実を結び始め、僅かであるが明るい話が出てくるようになってきた。仕事量拡大に備えた設備投資に、心理的な抵抗は少なく、使ったことのない設備の駆使、すなわち、今後の柱を構築していくことを考えるようになってきた」と述べた。
 締め括りになるが、工具再研磨事業の承継について、石川相談役は「役員も含め、幾度となく、機会あるごとに、気づくところで、心得とでも言うべき内容について話し合ってきた」と語りながら「代表者の承継という意味では、現社長へ引き継いだが、技術や社内文化の承継という意味では、役職者やすべてのスタッフと共に、今後も会社を育て、精進してほしいと考えている」。


石川相談役