世界切削会議(WCTC)で欧州、北米、韓国、インドから相次ぎ発表
主催国を代表してあいさつする松本会長
2013年に続く日本開催となった世界切削工具会議(WCTC)。開催場所は京都から大阪に移動したが「関西」であることに変わりがなかったことから、冗談交じりに次回日本開催は、神戸では?との声も聞かれたそうだ。
まあ、冗談はさておいて、アメリカ、ドイツ、イタリア、韓国、インドといった各国からの同業社が顔を揃え、仲睦まじく、情報や意見交換等ができたことによる「共有財産」は、無条件に貴重だろう。
主催国であるJTAの松本会長の挨拶に続き、欧州の工業会であるフェデリコ・コスタECTA会長が登壇。
「イタリアは3年連続拡大基調にあり、フランスは航空機産業が成長を継続し、ドイツは良好、イギリスは低迷、スイスは好調をキープ」といった2023年の欧州各国の概況を跡付けるとともに「今年の予測として、イタリアは後半から成長を予測し、ドイツは横ばい、フランスは航空機中心に成長持続、スイスは明るい材料に欠け、イギリスは年末から好転に期待」との見方を提示した。
欧州の課題は、ウクライナ問題などの地政学的な不安材料が横たわっている関係で規制が多い。選挙の年でもあり、この中で「右派」の台頭が懸念されるそうだ。
「労働人口は高齢化し、若い人材の採用、特に優秀な若者の入職が望まれている」。
アメリカは、トーマス・ハース議長が登壇し「今年は業界として2・5%アップを予測している。航空機、自動車ともに方向性が定まっていない。特に自動車は、EV車を受け入れておらず、従来車の生産に戻っているメーカーもある」と指摘した。
韓国については、YG1の責任者が経済状況を説明。
「経済の成長率が鈍化し、輸出と製造という2つのエンジンがスローダウンしている。自動車はハイブリッドが増加傾向にある」とし「工具については半分以上が輸出で占めており、特にアメリカ向けが増えている」と指摘する。
インドは「成長が期待できる。世界の工場になりつつあり、GDPの7割が国内によって生み出されている。労働人口の年齢層は35歳未満と若く、およそ6千万人の人はデジタル分野が得意。工作機械は15%成長が見込まれている」との情報を披露した。
会議で発言できるプラチナメンバーからは、清水牧野フライス精機社長、森下和井田製作所社長、西岡光機械製作所社長の3氏が挨拶に立った。
清水社長は、最近の10年間でリリースしてきた製品を振り返りながら「工具研削盤AGE30がベストセラーとなり、昨年はDB1という弊社初のリニアモータ搭載の機種を世に問い、ラインナップを充実させてきた。その一方で、円筒研削盤や工具測定機など、他のアイテムでも評価を得てきた」と述べ、森下社長は「ユーザーの世界的な広がりを見せるなか、ユーザー第一を掲げ、機械のあるべき姿を求め、シミュレーションやCAE解析のほか、コアであり続けるキサゲ作業などを駆使。インサート研削盤APXシリーズやプロファイル研削盤SPGシリーズなどに具現化して、アフターフォローとセットで顧客へのサービスを実践している」と語り、西岡社長は「CNC研削盤のほか、ドリルやカッタなどの切削工具の生産、さらに超短パルスレーザーによる超微細加工を手がけている。もちろん、操作性や性能についての研鑽は怠らない」とアピールした。
各国の発表の様子