イスカル本社訪問、連載第2回

イスカルジャパン株式会社

イスカルジャパン株式会社

岡田代表から工場の概況説明を受けた

ヘッド交換式旋削工具「NEO MODU」をはじめ、主軸への接近性の良さを謳う「NEO TURN(旋削工具)」、軸モノねじ切り工具「SOLID THREAD」、高精度90度肩削りカッタ「NEODO」、高能率仕上げ加工用バレル工具「MULTI MASTER」等・・・デモ加工では数十アイテムに及ぶ製品群を目の当たりにしたが、インサートチップはじめ、カッタ、ホルダの製造には、日本製の機械が積極的に活用されている。
イラン・ゲリCEOの言葉を借りるが「昨年のJIMTOFには、ここ、テフェンの地から、開発メンバーを中心に、およそ70人が大挙して参加した。日本品質に対する理解を深めるとともに、日本市場に内在するイノベーションへの期待がベースにあるからだが、日本の出展各社、特に機械設備に体現されるクォリティーの高さに、ユーザーとして、学ぶべきものが数多くある」と言う。
イスカルは、世界の主要工具メーカーの中で、最後発だが、世界第二位の地位を確立している。その原動力と言えるのが「イノベーション」であり、最近の例では、ヘッド交換式ドリルで2枚刃の「SUMO CHAM」から3枚刃「LOGIQ 3CHAM」の開発、製品化によって「生産性が50%アップした」(アンドレイ・ペトリリン テクニカルマネージャー)ことは、幅広いユーザー事例で検証されている。参加者アンケートからの引用だが「複合加工機向け Y軸旋削工具 ISO Y TURN」や「高圧クーラントのJET-CUT」といった、今後の拡販製品を含め「開発の背景を知ることの意義は大きかった」ことにも触れていきたい。
そんなイスカル社の原動力に通じるトピックスとなるのが、創業者のステフ・ベルトハイマー氏の非凡な発想と取り組みである。「自分自身で産業を育てる」ことに情熱を傾けたことで、イスカル社の発展のみならず、イスラエル国内におけるインダストリアルパークの形成にも尽力し、輸出産業の発展を志向。労働党のラビン元首相とは「盟友」関係にあったそうだ。
イノベーションに話を戻そう。
積層造形技術を駆使して工具を製作する説明の中で、前号で触れなかった側面に言及したい。
工具設計の柔軟性とも関わるが、4、5年前からの取り組みとして、工具素材であるブランクも3Dで製作。積層造形で原料のパウダーを重ね、焼き固めながら層を形成していく、そのプロセスで「パウダーの再利用」による、省資源化、環境への負荷低減に努めていることに注目したい。完成形である工具の軽量化、加工における切りくず排出量の低減にも、道を切り拓いたと言われ、3D活用によるイスカル社の「功績」への評価が待たれよう。
イスカルの工具は、自動車、一般産業をはじめ、航空機、エネルギー、重工業、建機、船舶、医療など幅広い需要層に供給され、エリア別では、北米で35%、欧州で45%、アジアでは20%のシェアを占める。
今回の日本からの訪問者へのメッセージとして、イラン・ゲリCEOは「製品を提供し、使用して頂くことによって、生産性を介して、付加価値を見出していただけるかと思うが、それがどのようなレベルにあるか、我々自身が試されることになる。このことが、我々の開発への取り組みに直結し、ドリル、エンドミルなどの工具種を問わず、付加価値を高めた新たな製品に結実していく」と訴える。
毎年、2000型番以上の製品がリリースされるそうだが、前述の各産業、各エリアで使用され、最先端の付加価値を体感する、その連鎖に関心を寄せない訳にはいかないだろう。
「デジタル、リアルの双方を駆使するハイブリッド営業マンの活躍によって、イスカル工具の成功事例、経験知、情報が伝達され、新たな顧客発掘の契機となる」(イラン・ゲリCEO)ことが期待される。
連載2回目の締め括りとして、参加各社の代表に協力してもらったアンケート結果から、主な回答を拾ってみた。
今回の訪問の最大の収穫は?との問いに「ユダヤ人と言う人種が、長い歴史のなかで多くの困難を乗り越えてきたこと、これが、様々なソリューションの開発に結び付いているのではないかと感じた」「差別化の中で付加価値提案の重要性を再認識させられた」「弊社で向上心や発想の転換が鈍くなってきていると感じているが、このことと関係しているのか、イノベーションの考え方に感銘を受けた」などの回答を得た。
セミナーや工場見学を通じた感想では「イスカル社のこと、イスラエルのことを知って欲しい、理解して欲しいという強い気持ちが感じられた」「自動倉庫、スマートファクトリーなどのスケールの大きさに驚かされた」「セミナーではイスカルの経営理念を説明いただき、根本の考え方を理解することができた。工場見学では無人化の推進、3Dプリンターを活用した製品開発にも注力されていることを実感した」などだ。
以上で、連載第2回とさせて頂く。連載3回目となる10月号では、2日間のイスラエル国内視察に焦点を当てつつ、イスラエルへの理解に繋がる知見を紹介していきたい。

ヘッド交換式旋削工具NEOMODU
ヘッド交換式旋削工具NEOMODU

主軸への接近性に優れるNEO-TURN
主軸への接近性に優れるNEO-TURN

イラン・ゲリCEOとメイール・ノイバウアー事業開発部長-(左)
イラン・ゲリCEOとメイール・ノイバウアー事業開発部長-(左)

最新の中央物流センター
今年1月から稼働の最先端物流センター

量産を可能とする広大な工場施設
製造工場内部の様子