切削工具の価格改定を巡って。軸物系では7年ぶり、インサートでは13年ぶりの値上げに

オーエスジー株式会社

オーエスジー株式会社

工具業界からは次々と新製品がリリースされている (写真は4月に開かれたインターモールド大阪でのオーエスジーブースでの出展例)

 

  •  住友電工が先陣を切って発表した切削工具の価格改定(値上げ)で、大手工具メーカーの間では、7月末までに、その内容がほぼ出揃った。軸物系では7年ぶり、インサート系では13年ぶりの値上げとなる。アプロ―チは流通分野で先行しているが、メーカー直需は、まだまだ、これからが「本番」を迎えることになる。
  •  タングステンやコバルトといった切削工具を構成するレアメタルの高騰のみならず、その他諸経費の値上がりも背景にあり「5%~10%」「10%~15%」「15%以上」「都度見積もり」「対象外」と各社は製品によって値上げ幅を異にしており、工具に占めるレアメタルの比重を考慮しての妥当性や戦略性が見て取れる。
  •  だが、実際に年内までに大手ユーザーを含めて価格改定が実行できるかどうか。どんな商材にしろ、値上げには理由がある。「諸般の事情」の具体的で説得的な話でなければならない。購入する側から見れば、平均で10%の値上げだとすると、1000円だったものが1100円になる。10000円だったものが11000円になる。早い話、販売する側は、上昇分を購入先に「飲んでもらう」必要がある。そこには交渉があり、駆け引きがあり、説得と納得の世界が横たわる。一方的に展開される欧米流とは違う日本流の展開が予想できる。先回りして「甘い」という人も出ている。交渉が貫徹できずに「中折れ」するとの見方だ。
  •  折しも、日本機械工具工業会が発表した2018年度の生産見通しは、前年度実績比で5・9%増の5108億円を予測。工具業界では初の5000億円台に到達することになる。
  •  年内までに値上げが浸透してくれば、売り上げでは、さらに「上積み」も期待でき、5000億円産業として堅牢な礎を築くことができるだろう。今年度は、その第一歩にしたい。