2番、3番、さらにホーニングまでの各工程を一元化。宇都宮製作所製「TGR‐016インプロセスドレス装置搭載仕様機」で生産性大幅アップのジヤトコツール。

ジヤトコツール株式会社

ジヤトコツール株式会社

オペレーターの望月さん。従来のチップ研削に比べ生産性が大幅にアップしたと語る

PCD、CBNといったコンパックス系インサートチップの加工向けに提案されている宇都宮製作所製「TGR‐016αインプロセスドレス仕様機」。導入第一号となったジヤトコツールでは今年3月に現場に据えられ、稼働からすでに半年が経過した。導入に至った経緯は何か。再研削の現状を織り込みながら、チップ研削における特長や評価についてヒアリング、紙面にまとめてみた。

 ジヤトコツールの2023年度の売り上げは14億円強で、うちジヤトコ以外の、いわゆる外販比率は7割を占めると言う。
 北村社長は「(コロナ禍を脱し)売り上げが徐々にではあるが上昇を辿ってきた。外販強化を進めていく中で、建機や農機、精密機器分野など、自動車関連以外の分野でも実績が伴いつつあり、特に2023年度は、初めて航空機分野からの受注に成功した」との取引の広がりを強調する。
 外販では、ミッションに関連深いブローチやホブ、シェービングなどの歯切り工具ばかりか、ドリルやエンドミルといった軸モノ工具の再研削や特殊工具製造の点でも、高評価を得ているジヤトコツール。
 「最近の顧客ニーズでは、単なる再研に留まらず、刃型の検討や改造依頼の話が案件として増えてきている。需要として、不等分割不等リードは今や当たり前になってきている」と村井営業課長が補足する。
 宇都宮製作所製「TGR‐016αインプロセスドレス装置搭載仕様機」については、開発段階から、試削り用のインサートチップの提供を通じて積極的に関わってきた経緯があったが、技術課の堀井スタッフによると「顧客からのニーズを踏まえた新商品開発を追求していく上で、チップ研削盤の更新需要機を探していた時期とも重なり合い、宇都宮製作所さんに相談した」のが発端だったと言う。
 かつては、旋回に合わせて削っていたため「段取りで精度が決まってしまう」制約があったが「(インプロセスドレス仕様機は)初期段階でホーニング幅の調整の必要があるものの、付属するタッチセンサーで砥石位置を含めて、機内で測定して自動補正しながらの研磨が可能。歩留まりも『高得点』で、100%良品としてアウトプットされる」(堀井スタッフ)との、プレテストの最終確認を経て、今年の3月に現場に据えられた。
 導入以降、2交代制のもと、月間1000本弱の加工実績だと言う。
 堀井スタッフは、研削砥石上にドレス砥石を配置し、砥石の目詰まりを防ぎながら効率よく研削できる工夫がなされている点を評価する一方「ダイヤモンド砥石の『共削り』となるため、砥石の減りが予想以上に早い。ドレス時間短縮を課題に挙げている」。
 チップ研削における従来との比較では「2番、3番、さらにホーニングまでの各工程を一元化できるため、生産性の大幅アップに直結。旋回と割り出しで逃げ角を形成していく手法とも言えるが、このメリットは非常に大きい」との評価を下す。特に人手不足との関連で、TGR‐016αの特長でもある、ホーニング加工の自動化の魅力は大きいと強調する。
 再研削を巡っては、納期での相談ごとが増えていると言う。インサートチップの分野で、顧客から今後、どのような評価が得られるようになるのか、期待したいと思う。


ドレッシング砥石は研削中、研削砥石に当てて、目立てを行いながら加工できるように設定されている