月産1万2千本 米国製トランザー初導入の三洋工具長野事業所
チェーンコンベアでスラッジを掻き出す処理法が決め手

取材に対応いただいた遠山次長
自動車関連向けの特殊工具製造で定評のある三洋工具長野事業所を訪問し、遠山製造部次長に、現況や課題をヒアリングしながら、昨年10月に導入されたワルター製ビジョンに、濾過機として、初めてセットした米国製トランザーフィルターの評価を取材した。
工具研削盤を筆頭に、工具製造に関わる設備は、トータルで200台以上になると言う。
遠山次長は「小ロット、大ロット双方への対応は避けられない。しかも、弊社の場合、ほとんどが特殊対応。工具種では、超硬ソリッドが7割、PCD工具が2割を占め、その他ではロウ付け工具、耐摩工具、サーメット工具などを手がける。生産本数では平均で月産1万2千本」と説明する。
将来を見据えたとき、新商品開発をテーマに設定し、自動車産業プラスアルファを展望。「同じ自動車でもEV化への対応や、産業の米とも言える半導体関連の分野にコミットしていければと思う」との考えにも言及する。
設備投資の動向では、当然の流れとは言え、汎用からNC化へのシフトが顕著で、特に人手不足を考慮して、無人化を追求。ローダー仕様の高まり、ロボット化への傾斜が目立ってきたようだ。
「コア設備とも言える工具研削盤については、昨年10月にワルター製ビジョン、続いて11月にはワルター製パワーダイヤを相次いで現場に据え付けた。前者は、超硬長尺工具全般とフルート(溝切り)研削ほか再研削に対応し、後者は特定ユーザー向けPCD工具の再研削、超硬工具製造という役割を担っている」。
三洋工具とトランザーフィルターの関係は、2008年のワルター製工具研削盤導入来、半ば「仲立ち」する形で、ご縁があった。
「ただ、従来のトランザーフィルターはドイツ製。昨年導入したビジョンに選んだのは、当社初の米国製『V‐2』だった。決め手となったのは、スラッジ処理法。チェーンコンベアを使って、掻き出す方法を採用しており、人手に頼らずに済むのが大きなメリットと判断した」と言う。
遠山次長によると、ろ過機は工具製造では、工具研削盤に次ぐ、重要な設備に位置付けられると言う。
「稼働から1年が経過した。ろ過能力の高さの証明でもあるが、研削液が常にクリーンな状態にキープされており、この結果、十全な砥石の能力が引き出され、工具の面粗度向上に貢献する一方、適正にスラッジが処理されることで機械寿命にも好影響を与えていると思う。スラッジは当初の予想通り、チェーンコンベアで掻き出してくれるので、ペール管にどの程度溜まっているか、時折、確認するだけで済んでいる」。
回収されたスラッジは、処理業者に販売できるため、米国製トランザーフィルターは、手間が省けると言う点でも、重宝できるそうだ。
「今後、ろ過機を検討する際には、米国製トランザーフィルターは有力な候補になると思う。将来的には『集中ろ過』の考えも考慮していきたい」。
工具の面粗度向上に寄与