ワルター機を活用し、専用工具製作して差別化に活かす平和産業。自前工具で半分を賄い、後は市販工具を活用

6月に導入されたビジョン400Lとともに撮影に収まる八尾社長(左)と日下部統括
航空宇宙産業で、機体、エンジンを問わず、質量ともに数多くの実績を積み上げている平和産業を訪問し、八尾社長、日下部西日本統括に、コロナ禍を経た現状を取材しつつ、工具の内製化において積極導入を進めるワルター機の果たす役割、評価についてヒアリングを行った。
八尾社長は「おかげさまで、目前に迫りつつある8月決算は、1人当たりの売り上げが過去最高を予測している。コロナ禍から、エンジンの分野は完全に回復して、交換部品の需要を中心に売り上げに寄与する一方、機体は受注ベースで上向き始め、タイムラグを伴いながらも、今後、製造面でも寄与してくると思う」と指摘する一方「コロナ禍において、新たに半導体製造装置部品を手がける機会を得て、社内比率で1割を占めるまでに成長している」との新たな展開にも言及してくれた。
ニュース性で捉えれば、7月には長崎工場が竣工、稼働スタートする運びとなり、製造工場は全国で6カ所を擁するまでに成長を遂げた。
「コロナ禍では、政府による持続化給付金や事業再構築、休業補償・・・といったきめ細かな動きを捉え、活用しつつ、売り上げの落ち込みをカバーするとともに、将来に備えた設備投資を積極的に展開した」ことによって「たとえば2020年から2021年にかけて発生した(宇宙関連の)開発需要にも対応することができ、業績回復に向け、舵を切ることにも繋がった」そうだ。
コロナ禍を脱して、2024年に続き、2025年当初からは、まさに製造レベルで従来の量を凌駕するレベルに到達。質的な満足度アップも織り込み、今後を見据えて、工具の内製化では、新たにワルター製ヘリトロニック・ビジョン400L3台、測定機のヘリチェック・アドバンスを発注した。
日下部統括は「老朽化更新ばかりか、増強も視野に入れている。アルミ加工用工具の充実や、増大が予想されるニッケル系などの耐熱合金に対応する工具の増産が念頭にある。現状では、ノンコートを基本に、エンドミル主体に月産1500本(再研磨含む)。φ20~φ25ミリクラスの太径が3割を占める。金額ベースだが、自社で使用する工具の半分を賄っている。ドリルは基本的に市販品を活用している」と説明する。
ノンコートは寿命が安定し、管理も容易なことがポイントとして指摘された。
工具内製化のメリットとして、毎回新品の専用工具が制作でき、目的とする製品(部品)の差別化にも通じる点を挙げてもらったが「径補正が不要となったことで不良品が減って、品質が安定したことも付け加えたい。また、社内で工具を製作すると超硬紛も売れるので助かっている」と日下部統括が補足する。
平和産業で工具の内製化がスタートし、15年が経過した。
「ワルター機のNCがファナック製に置き換えられたのを機に、ビジョンを購入して工具製造に着手した。この点でワルター社は弊社にとって、思い出深いメーカーであり、工具内製化での貢献度が高い。発注したビジョン3台のうちすでに1台が6月に船橋工場に導入され、あと2台は9月に船橋、10月に駒ケ根の各工場に据え付ける予定だ」。
ヘリチェック・アドバンスも導入され、品証の点でも抜かりはない