安田工業製マシニングセンタ、ユキワ精工製ツーリング成果上げる幸新金型(福島・相馬郡)

有限会社幸新金型

有限会社幸新金型

主要設備はすべて安田工業製マシニングセンタで構成されている

安田工業製マシニングセンタの特性を、よりいっそうフルに生かせるツールホルダとして、ユキワ精工のスーパーG1チャックを活用している現場があると聞いた。
 福島県相馬郡で、ダイカストや樹脂の金型づくりに取り組む幸新金型だ。創業は平成5年。北海道出身の木浪元幸社長のもと、今では、子息である木浪新章専務が主力を担う。
 「当初はビデオデッキなどの家電製品に関連する樹脂型の仕事に従事し、その後、自動車のエンジン廻りの部品へと、時代の変遷を踏まえながら軸足を変えつつも、相対的に樹脂型、ダイカスト型の比重はイーブンに請け負ってきた。常に『隙間』を狙い、仕事の確保と言う点ではリーマンショックまでは、あまり苦労した記憶はない」と言う。
 だが、リーマンショックによって、仕事が「蒸発」。小所帯故の、打ち合わせからプログラム製作、加工、仕上げに至るまで「一貫して1人」を逆に「リスポンスの速さ」に繋げて、現在では大きく分けて、自動車、電池・バッテリー、高精度樹脂製品関連の各分野から仕事を請け負うようになっている。
 自動車分野は、社内シェア6割を占める屋台骨で、ダイカストの比重が高い。
 「樹脂よりもダイカストは、金型寿命が短いので、寿命をいかに伸ばすかがポイント。他社が3万ショットなら、当社は10万ショットまで活かせる金型を提供できるのが強みだ」と語る。
 放電加工の扱いをどうするか。意識するのが、膨張と収縮の繰り返しで、できてしまうナシ地面による影響を受けやすいヒートクラックだそうだ。
 「切削加工の活用法が重要と考える。エンジン廻りでは樹脂型も増えてきて、燃費向上を追求するなかでパーツの減少も伴い、複雑化してきた」との特徴を指摘する。
 ここ2年の間で急伸してきたのが、電池・バッテリー関連だ。
 「成形も手掛けるお客様からの外注先として請けている。新たな型の製作もあるが、型の修理、補正の仕事で信頼を勝ち得ている。型による個体差があるので、言わば『さじ加減』の世界。汎用機からNC機まで駆使して高い満足度が得られるよう対応している」。
 樹脂製品関連は、精度の高い多数個削りで「リピートが多いのが魅力」。無くならない製品とは?と追求した結果、樹脂製の容器に辿り着いたそうだ。
 「自動車よりも意外と精密さが要求される。しかも、物量がある。最終的なポイントは客先と詰める必要はあるが、細かい指示を受けることなく、請け負えることができるかどうか。再現性が重要で、デジタル化が大切になる」。
 以上が時系列を踏まえた幸新金型の概略になる。
 安田工業との出会いは、放電加工が主力だったビデオデッキの仕事をマシニングセンタに置き換え、直彫りで効率化を図ろうとしていた1998年当時に遡る。
 「JIMTОFに出展していた安田工業ブースの加工サンプルが気になり、営業担当者に話しかけた。当時、焼き入れ鋼の加工は未知数の領域だったので、驚きの連続だったことを今でも覚えている」と言う。
 焼き入れ鋼が削れるかどうか、半信半疑ながら翌年1999年にYBM640Vを導入。「Gコードって何?」ってレベルからのスタートだったと木浪社長は苦笑いする。
 「部分的に焼き入れ鋼の加工はしていたが、狙い通りの寸法にもなりにくく、苦慮していた。だが、この機械は1μ送ると、きっちり1μ削れる。凄い精度と剛性を体感。正直、衝撃を受けた」そうだ。
 手仕上げの磨き工程も省け、離形性もいいことが分かったと言う。
 受注量の拡大で2005年には、もう1台リピートオーダー。「直彫り=速い」のメリットは、時間のかかる前工程で、初号機の活用を図ることにも繋がった。
 「放電、ワイヤ、フライス、研磨の各工程をできるだけ1台のマシニングセンタで完結させたい。直彫りに特化する所以だが、東日本大震災の2年後には3台目。2020年には、5軸加工機Vi40を導入し、3軸でやれなかった加工の広がりを実感することに。日中に段取りして、夜間運転でも実績を重ね、長時間かかる仕事の受注にも成功した」。
 とにかく再現性に優れると言う。長時間稼働させると機械自体の熱変位もあるが「癖が一定」なので対応できるとのことだ。
 「機械設備のビジョンが定まってくると、弊社がターゲットとするニッチな領域に、ツールホルダの物足りなさを感じるようになっていった」。
 今から10年以上前、2台目の640V導入後、しばらくしてからのことのようだが、ある日、ユキワ精工の営業マンの訪問を受けた。他社とは違うって、熱心に説かれ「所有するホルダが足りなかったこともあって、スーパーG1チャックのテストサンプルを置いていかれた」。
 「その頃、焼き入れ鋼のコンタリング加工で、刃長の長いスクエアエンドミルを用いると、どのメーカーのツールホルダを装着しても、壁がまっすぐにならずに『たわむ』。悩みの種だったので試しにツーリングをスーパーG1チャックに付け替えたところ『たわむ』ことなく、まっすぐに。垂直にビビリもなく削れたことに正直、驚いた」。
 もっと早く導入すればと、後悔したと言う。
 「ビビリがないので面粗度ばかりか、寸法精度もアップ。工具費の15%程度の節約にも繋がった」そうだ。
 最近になるが、10本まとめて購入し、トータルでスーパーG1チャックは20本を数える。
 「4台ある安田工業のマシニングセンタのツールホルダの主力をユキワ精工製にしていく計画。安田工業の機械剛性をさらに引き出してくれるホルダだと思うからだ」。
 締めの言葉とも言えるが、木浪専務からは「ライセンスもお持ちなので、BBTの焼き嵌めを展開して頂けるとありがたい」との声も挙がった。

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