冷間鍛造金型で優位性発揮する安田工業ユーザーのキョーシン(奈良・葛城市)。多能工化追求して生産性向上実現

取材に対応してくれた柳谷工場長(左)と林田製造部長
冷間鍛造の金型メーカーとして、奈良の葛城市を拠点に、業容の拡大を図っているキョーシン。柳谷工場長、林田製造部長に面談し、ものづくりの考え方や特徴をヒアリングしながら、受注量が拡大してきた3年前から差別化に一役買っている安田工業製「YMC650」「YMC430」の導入の経緯や役割、評価について取材を試みた。
キョ―シンの社歴をなぞれば、1991年に、設計部門を抱える冷間鍛造金型商社としてうぶ声を挙げ、その後、2003年からは、顧客からの要望を踏まえつつ製造体制を確立していき、2008年には、同業のアタイス工業と業務提携を結び、多種多様な金型づくりを展開している。
柳谷工場長は「アタイスでは超硬ダイス、弊社では粉末ハイスの加工という役割分担を基本的に担っている。自動車関連の顧客が7割と大半を占め、機械部品分野で1割~2割。1ロット1個から、せいぜい4個までで、受注内容は試作品向けが多い」との製造概要を説明する。
設備導入の考え方としては、多品種少量への対応を軸に、夜間を含めた自動化・無人化を視野に入れている。
現場を統括する林田製造部長は「現場の特徴として挙げたいのが、多能工化による生産性向上の追求だろうか。1人が機械を2台持ち、3台持ちしながら、プログラミングから段取りして、完品まで手がける。問題点があれば、明確に洗い出せるという利点がある」と、多能工化推進の旗を振る。
製造は50人体制。コロナ禍の影響は、あまり受けなかったそうだが、それでも1割~2割減を強いられた時期もあったと言う。
「安田工業は2021年に5軸加工機のYMC650を現場に据えた。従来は放電で対応していたが、形状精度が安定せず、(YASDAの)直彫りしかないと判断した」ためだが「導入後、1ミクロンを追い込んでいけば、1ミクロンが削れる、安心と(顧客からの)信頼を勝ち得た機械で、(弊社の)5軸加工機を使いこなす能力への評価とも相まって、仕事量拡大に繋がる営業ツールとしてのアピール力が増してきている」(林田部長)。
一例を挙げると、ヘリカルギアの受注。2年前から数量ベースで着実に増えてきたそうだ。
そして、こういった成果を踏まえ、マシニングセンタの増強を意図して、翌年の2022年には、YMC430を追加、発注した。
「ミクロンオーダーの加工、公差の厳しい加工で優先的に活用していくなかで、顧客からの新たな評価として、超硬素材の仕事が増えてくるようになった」「人手に頼って加工面を鏡面にする作業が、YMC430だけで完結できるため不要となった」‐求められる精度の確保、対応によって、営業ツールや人手不足への対応にも貢献していく面は見逃せない。
キョーシンでは、HRC70クラスの高硬度加工は「当たり前」のようで、工具では日進工具とユニオンツールが多い。
キョーシンでは、専任の営業体制を敷き、エリア、産業を問わない需要動向の発掘にも努力を傾注している。今後とも注視していきたい。
YMC650によって形状精度の安定をもたらした
YMC430を追加発注、新たな仕事舞い込む営業ツールにも