切削をプレスで置き換え、一貫してコスパを追求。「CFP」工法として結実させたサイベックコーポレーション。 次世代自動車部品の金型開発で、岡本工作機械製高精度成形研削盤「HPG500NC」導入、活用
取材に対応いただいた平林副社長
金型にこだわり、(顧客に)感動を与えて、ロマンを描いていく-開口一番、平林副社長は、革新的なプレス加工技術でユーザーから高評価を得ているSYVEC(サイベック)という社名に託された「信じる友に、価値ある技術の提供」への思いを言葉に表した。
その具現化に当たって最重要視するのが、最高水準の設備であり、環境であるが、特に顧客のニーズを先取りするために設けられた地下工場は「外気温、振動の影響を極力排除していくため、地下11mに建設した。工場内温度は年間通して23℃+-0・3度に設定され、振動は19デシベル以下に抑えている」と言う。気温、振動等をコントロールすることによって、文字通り、最高クラスの環境を創出している。
さて、サイベックコーポレーションの設立は1973年10月と言うから、今年で記念すべき50周年。
「ハードディスク関連などの弱電関係の仕事をメインにスタートしたが、1990年代後半に入ると、自動車部品関連にシフトし、2010年までのおよそ10年以上にわたって、一極と言っていいほど、自動車に特化した時代が続いた」。
この過程で、磨かれ、確立された技術-それが、冷間鍛造と順送プレスを複合した「CFP工法」と言われる同社のコア技術だ。
「切削加工に比べ、コストは3分の1。プレス加工で鏡面仕上げ、複雑形状、軽量化、ダレなし、といった高品質、高機能にプラスして、工程の短縮まで織り込んだ」。
その評価の一端だが、大手自動車メーカー幹部の表敬訪問を受けるまでに至った。
「とは言え、自動車一辺倒では、経営リスクが伴う。2012年からは、医療分野や2輪、産業機器分野にも進出。コロナ禍ながら、社内シェア25%にまで成長してきた医療系分野の堅調さに助けられ、複数の需要の柱を設けることの大切さを実感した」。
サイベックコーポレ―ションの50年の歩みを振り返ると、常に意識してきたのがニーズの先取りであり、それを具体化する技術だ。
「その役割を担うのが2000年に設立したVT研究所。V(価値)を生むT(テクノロジー)で、VT加工部署の工作機械のほとんどは、メーカーとの共同開発」であり「岡本工作機械の成形研削盤は、従来機の更新設備として、2021年にスタッフとともに安中工場にお邪魔し、選定させて頂いた。ポイントとなったのが、操作性の良さ、油圧レスと言う環境に配慮されている点だった」。
省エネ補助金を活用し、今年の1月、精密成形研削盤として定評のある「HPG500NC」3台が新規金型・試作金型工場に据えられた。上下前後送りが最小設定0・1μm、左右前後スライドはV-V摺動面を採用しキサゲ摺り合わせによる高精度仕様となっているほか、トイシ軸の剛性やフレームの大型化による前後の安定性を向上させている。
ポイントとなった油圧レス構造の採用は、廃油処理を不要とするばかりか、熱変異の最大要因を排除することにも繋がっている。
HPG500NCの特徴を追記すれば、平面研削盤の機能を併せ持ち、省スペース化にも寄与するほか、新オプションの機上計測ユニット「Quick Touch」も選択可能に。廃油処理を不要としたことで年間消費電力60%削減、199・2キロのCO2削減効果も。
オペレータを務める重澤主任技師は「工場内環境を重視する我々にとっても、省エネが図られている点は評価が高い。導入後、半年間の取り組みでは、試作開発のための要素実験を繰り返し、次世代自動車部品の金型開発における活用を図ってきた」と語る。
次なる半世紀をどのように展望するか、新たな跳躍台の重要ツールとしても、HPG500NCの活用に注目していきたい。
試作開発の重要ツールとして導入したHPG500NCを駆使する重澤主任技師