オーエスジーにおける宇宙部品開発の現状。藤井宇宙部品開発担当に聞く「超小型人工衛星部品」「超小型光通信用光学ユニット」ほか

株式会社オーエスジー

株式会社オーエスジー

宇宙部品開発担当の藤井さん

オーエスジー本社がある豊川市が5月下旬、市制施行80周年記念行事で「豊川に根付いた技術力」として、宇宙産業に関わるオーエスジーを紹介した。2015年、民間企業で世界初となった、微小デブリ(宇宙ゴミ)観測用「IDEA OSG1」プロジェクトへの参画は、本紙でも取り上げ、記憶されている読者もいるかと思うが、その後の宇宙部品開発に関わるオーエスジーについては意外と知られていないのではないか。本紙では、この分野の中心人物の一人である藤井尉仁氏に面談し、この間の経緯や宇宙部品に関わる具体例等について紙面化を試みた。

 オーエスジーが宇宙産業に関わるきっかけとなったのが、宇宙ゴミの除去を進めていたアストロスケール社との出会いだった。
 藤井さんは「IDEA OSG1を搭載したロケットの打ち上げは、結局、失敗に終わったが、その後、アストロスケール社に資本参加し、2021年には、デブリ除去の実証実験を行う同社アストロスケール社が企画した人工衛星『ELSA-d』の部品の開発・製造にも参加している。以来、人工衛星の開発関連の仕事に従事している関係者との親睦を深める機会が増えていき、その過程で、宇宙部品に関わる設計、作図、製造、表面処理、検査、納品に合わせトレーサビリティといった、一連の流れとして対応できるよう、努力を重ねてきた」と言う。
 今回、受託している宇宙部品を2点、取り上げてみたい。
 ひとつめは「放出ポッド」と言われる、キューブサット規格(1U~W6U)と呼ばれる超小型人工衛星をロケットから軌道投入させるための放出機構。大きさは3Uと呼ばれる100×100×340mmと、W6Uと呼ばれる100×226.3×340mmの2種類となる。
 「キューブサットの軌道投入には必ず、必要となる機構のため、本格的に運用が開始されるとリピートオーダーが発生する。弊社としては、量産を見据えた製作に当たって、開発段階の設計からコストを意識した、加工技術を機構に織り込み、最適化することで結果的に高機能化へ繋げることや、ギリギリまで軽量化をしたい「細くて薄くて、曲がりやすい」精密部品にも、無駄な製造工程にならないよう部品単体への要素のテコ入れなどに力を割いて生産性向上と高品質の両立に注力してきた」。
 ふたつめは、人工衛星と地上間の高速通信を目的とした「超小型光通信用光学ユニット」。
 「製造プロセスそのものを重要視し、得意とする複雑な切削加工を駆使しつつ、アルミ系特殊金属による光学ユニットの加工や、構造体集約化による強度と軽量を図りながら組み立ての安定性やコスト面でのメリット含め、理に適ったものづくりを追求してきた。そうして積み上げてきたことを財産として大切にしていきたい」。
 以上、象徴的な受託部品として「キューブサット放出ポット」「超小型光通信用光学ユニット」に触れたが、部品製作とは別に、宇宙医療の開発をサポートする活動も展開していると言う。
 「宇宙空間のような『特殊環境』極地や災害地でも活用できる、点滴のような輸液システムの開発支援。昨年10月から取り組みがスタートした。宇宙旅行など、健康に不安のある個人の体調管理のために重要なツールとなる」。
 オーエスジーでは、宇宙部品に関わるチームを編成しており「初の試みであることから、目標の取り組みに、お互いが自分で考え、アイデアを出し合い、実現させるスキルを身に付け、成長できるようにしていきたい」と藤井さんは締めくくった。

W6U放出ポッド
W6U放出ポッド