トラックのピストンを冷却するオイルジェットやチェックバルブ、コンプレッサーのオイルフィルター等で高シェア
大安工業所角田工場がユキワ精工製スーパーG1チャックでビビりや工具の破損に決別、工具費年間10%削減も
森工場長(右)とスーパーG1チャックを手にする佐藤製造課長
大安工業所を訪問し、メインとなるトラックのオイルジェットやチェックバルブ、コンプレッサのオイルフィルターなどの部品加工で、ユキワ精工製スーパーG1チャックがどのように活用されているか、森工場長、佐藤製造1課長に取材を試みた。
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1946年、水道用コックの製造を皮切りに神奈川県で創業した大安工業所は、その3年後には、ピストンを冷却するオイルジェットなど、現在の主要取引先に連なる、いすゞ自動車や日野自動車といったトラック関連、コンプレッサのオイルフィルターなど産業用の部品加工を手かげるようになる。
森工場長は「創業時の水道用コックの『流したり、止めたりする』応用技術が評価され、トラックやコンプレッサに関連する部品加工へと繋がっていった。取引企業は関東を中心に、およそ15社。現在、製造は角田工場に特化しており、神奈川本社は間接部門のみの機能となる」と言う。
現場では、加工から組付けまでを行い、加工ラインは、20個~100個単位の、段取りしながら対応する汎用ラインと、量の多い時で月に16万個という、量産の専用ラインに分けられる。
「ロットの多い専用ラインは、専用機を駆使しながら対応するのに対し、汎用ラインは受注する数量によって、工程分散、工程集約の棲み分けを図っている」と佐藤課長は語る。
汎用ラインは、NC旋盤とマシニングセンタを活用するが「設計スタッフによって、加工しやすい形状を考え、受注先の了解を得て、量産へと至る場合も多い」(佐藤課長)。アルミを中心に被削材は鉄、鋳物がメインだ。
森工場長によると「NC旋盤は、滝沢鉄工ほか、高松機械、ミヤノなどを設備し、マシニングセンタは、森精機の実績が高かったが、2000年以降は、小物の受注を意識し、ブラザー工業のタッピングセンタ(スピーディオ)へと移行していった」そうで、この20年間で2年に1台か2台は導入、最新では昨年12月にスピーディオ「S500-Xd1」が現場に据えられている。オイルジェット、オイルチェックバルブを中心とした内径加工、横穴加工などで活躍する。
スーパーG1チャックに出会ったのは5年前、20年近く付き合いのあるユキワ精工の担当営業マンの勧めで、バルブを挿入するボルトの新規案件で試してみることになった。
「φ5ミリのボルトの内径を高い面粗度で仕上げていく必要があったが、仕上げのリーマ加工で、ビビりや工具の破損が発生して困っていた。他の条件は同じ、ツーリングだけ他社製からスーパーG1チャックに切り替えたところ、直ちに問題が解消。しかもコンマ台の削り代にも拘わらず、リーマ加工による高い面粗度が確保できるようになった」そうだ。
その後、顧客からの評価も次第に高まっていき、新規案件が拡大の一途を辿り、月平均で16万個を受注するまでに成長。φ5ミリからφ7ミリのボルトにも横展開されるようになり、スーパーG1チャックは総計12本に。ボルトの内径リーマ加工の「必需品」の地位を占めるに至り、ビビりの解消や面粗度アップばかりか、振れがないため工具の長寿命化にも繋がっていると言う。
「繰り返し精度の点でも高い評価を下せると思うが、振れがないため、工具では年間、10%くらいの節約ができていると思う」と森工場長は断じる。
流体の量を調整するコック技術を梃子に躍進する大安工業所。EV化への対応も要注目だ。