岡本工作機械製作所の伊藤技術開発本部長が営業本部長を兼任。「市場への供給能力を引き上げていく」
伊藤本部長
4月1日付で伊藤暁技術開発本部長が営業本部長を兼任することになったことを受け、小紙では研削盤を主体とする実績と現状の特徴や今期の見通し等について伊藤本部長にインタビューを行った。
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新中期3か年経営計画の最終に当たる2025年3月期には、売り上げ500億円、営業利益60億円と言う目標が設定されている。
「工作機械、半導体関連装置、そして精密部品(歯車)・素材(鋳物)事業3部門の総計だが、初年度の前期で売上高430億円、営業利益で48億円が外部発表にて見込まれており、計画達成に向けて弾みをつけている」。
従来からの営業路線を踏襲しつつも、業種・業態、地域、機種・・・あらゆる角度から販売戦略を練り上げていくことが念頭にある。
「特に研削盤は、部品共通化を追求しながら、リードタイム短縮の実現を図り、市場への供給能力を引き上げていきたいと考えている」。
直近の引き合い、受注を牽引する、ひとつのキーワードを挙げれば「大型化」だ。
「一例を挙げれば中国市場を中心とするEV需要を指摘できる。EV向け大型順送金型加工向けが代表例。求められるサイズは、およそ1500×800以上となる。実は10年前からニーズが高まってきており、内部部品が薄くなってくるのに伴い、平面度に対する要求が高まってきた。照応する平面研削盤では、PSG-CHシリーズ、UPG-CHシリーズ。V-V摺動面や精圧スライドを採用した超精密門形平面研削盤で、高い平面度、鏡面のような面品位が確保できる」。
因みに門形シリーズは2010年以降、日本を含む全世界に100台以上納入する、ベストセラー機に発展している。
「私は2000年から2009年まで営業の一線で活動していたが、その後、安中工場に戻って来て最初に開発を手がけた機械がPSG-CHシリーズ。ここまでヒットをした機種の為、少なからぬ縁を感じている。従来はコラムタイプだったが、ターゲットとする順送プレス型の大形タイプへの対応として剛性アップに配慮した門形を採用、併せて操作性の向上も追求してきた」。
注目すべき世界中で評価が高まってきている機種と言えば、PSG-SA1シリーズだろう。2017年の販売開始以来、1000台を超える納入実績を積み上げてきた。
「タイで生産している汎用平面研削盤だが、今後さらに付加価値を高めていくため、昨年からオプションで機上計測ができる『クイックタッチ』の搭載を可能とした。機外測定と比べ、作業時間を32%、人の拘束時間では89%それぞれ削減。顧客からも、すこぶる反応が良く、今では、標準搭載の可能性も出てきている」。
制御面ではオプションにて「クローズループ方式」を採用をすることで、位置決め精度を高めている点も、要チェックだろうか。
研削盤の国内外比率は4対6。海外では、中国、北米の比重が高まっている。
「4月上旬に開催された中国・CIMTでは、前回よりも来場者が多く、EV関連需要の高さを改めて感じた展示会となった。弊社は中国で、歯車の製造をスタートさせており、来年からは、汎用平面研削盤の製造にも着手する。営業拠点も、大連、常州、深圳、上海にそれぞれ設けている」。
2023年度の景況について、どのように予測するのだろうか。
「前期と比べて『踊り場』との見通しもあるなか、供給能力アップと言う点では、下半期以降に照準を定めている。その際、キーを握るのが、タイのみならず、円筒、内研、ロータリーの各汎用・NC研削盤を中心に、半導体関連も手がけているシンガポール工場の活用だ。材料入手は引き続き厳しいと予想しているが、注残を少しでも解消していき、顧客満足度向上に努めていきたい」。
独自のコラム構造を採用しているPSG127CA-iQシリーズ