事業再編中のアイシングループへの提案が深化-東陽・羽賀社長インタビュー

株式会社東陽

株式会社東陽

羽賀象二郎社長

 

     「変化は商機」と捉えるなら、まだまだ、途上にあるアイシングループの事業再編は、(競争が激しくなるとは言え)東陽にとって、次なるステップへの、大きな「跳躍台」の役割を果たすと言ってもいいだろうか。

 

     羽賀象二郎社長は「顧客の事業再編が進行するなかで、シートやボディーについては『道筋』が見えてきたものの、ブレーキ関連は、今後、いろんな選択肢があり、方向性についてもまだ、少し、時間がかかるのでは、と考えている」。
     2050年、トヨタ自動車は、エンジンだけで走る車をゼロにする‐という目標を掲げて以降、トヨタ向けのウェートが高いアイシングループ内で危機感が醸成されてきたと聞く。事業再編を促す直接の要因であり、人事面ではトヨタ自動車で副社長を務めていた井原保守氏がアイシン精機の社長に就任している。
     「事業再編に伴う変化を『効果』と受け取っており、提案内容に厚みを加えていく機会としていきたい。事実、顧客の顔色は悪くなく、市場の縮小は感じ取れない」と目の前で展開されている再編を羽賀社長は「好機」と捉える。
     東陽では2期連続で売り上げ1000億円の大台を突破している。今期はどうか、羽賀社長に水を向けると「数字そのものには拘らない。現場で必要とされる、有効な、新しい商材の提供を技術的提案とともに、今後も、どのように展開できるか考え、実践していくだけだ」と「選ばれる商社」としてのスタンスを堅持する。
     たとえば、自動車では「自動運転」という「レール」が敷かれた。
     「あっという間にそんな時代がやってくる。要求される部品、その加工には、どのようなツールが有効か。目の前では人手が足りない、という事情が、もっと深刻になってくるだろうし、日々の活動に即しても、現場からの省人化、ロボット化への期待は大きく、保全にかかるコストの引き下げ、稼働率の向上・・・と課題は尽きない」。
     急速に進んだ円高では対応として新たに「現調化」が進んでいくことが想像に難くない。
     ルーチーン化してきているが、羽賀社長に各エリアの状況を概観してもらうと「中国は、設備関連の動きが振るわないため、状況は良くない。タイは『ベース』の域を脱しておらず、インドネシアも主体が2輪のため、活気を呈するには至っていない。昨年、設立したインドは、これからだ」と総じて、アジア・アセアンの状況は、他社同様に芳しくないようだ。
     「メキシコは、現地日系メーカーからのサポートの必要度が高まっており、イラプアト、アグエスカリエンテスに加え、来年にはケルタロに新たに拠点を開設。支援の輪を広げていく準備を整えている」とし「北米は、このメキシコを含め、引き続き高い水準で推移している。ただ、人件費の高騰による人の募集の厳しさ、ものづくりへの関心のレベルなど、気になることも」。欧州については「自動車販売の回復も織り込まれた経済面での回復があり、徐々に数字の上でも期待が持てるようになってきている」と言う。
     自動車業界を見れば、電気・電池自動車、ハイブリッド車など、ユーザーから見れば、いっそう選択肢が増えてくる。さらにその動向がどうなるか、製造現場から見れば、予断の許さない状況が続く。
     そして「車を所有するのではなく、シェアするという選択肢も、益々、広がっていくのでは?」との羽賀社長の予測も踏まえて考えてみると、サプライヤー業務は、従来とは次元の違う対応力が要求されてくることになる。「解」はすぐには出せない。
    (JIMTOF出展小間番号 W1044)