寺井部長に聞くMOLDINOにおけるソリューション営業部の役割。高送り工具の最前線は「TR2F」。ダイカスト金型の高機能材を高能率に削れて、金型の高寿命化に寄与

応対頂いた寺井部長
MOLDINO成田工場に、4月1日付でソリューション営業部の責任者に就任した寺井部長を訪ね、このセクションの果たす役割をはじめ、金型産業の未来をどのように展望し、提案していくのか。新製品紹介を交えつつ、今後、期待がかかる微細加工へのアプローチ等も含め、ヒアリングを試みた。
ソリューション営業部の役割は何か。
「主要には、顧客の困りごとに対応した技術サービスの提供・強化、弊社営業マンの技術的側面におけるレベルアップの追求、展示会への出展や機械メーカーをはじめとした周辺技術の動向を踏まえた市場のトレンド分析‐に集約される」。
スタッフは、滋賀の野洲工場、千葉の成田工場、静岡営業所に所属するが、ユーザー訪問を通じて、加工方法の検証や課題解決の提案、個別セミナー等で、出張する機会は多い。
「改善と言うものは、お客様とメーカー双方の努力によって成し得るもの」という寺井部長の考え方は、世界初の高送り工具「ASR」の誕生が「等高線を速く加工したい」というユーザーニーズから生まれたことと無関係ではないだろう。今から25年前に遡る。
以降、経済性に優れた4コーナ「ASRF」、中太径「ASR多刃」、汎用性の高い3コーナ「ASRT」、4コーナで小径化された「ASRF mini」、高能率・仕上げ精度向上を狙う(中径)「TD4N」、高能率・高切り込みも可能な(太径)「TD6N」、圧倒的な高送りが可能な(大径)「TR4F」、そして2025年、ダイカスト金型の高機能材で強みを発揮する「TR2F」へと「高送り工具」は結実する。
「硬くて粘い、高機能材として知られる被削材DH31‐S、DAC‐iやDIEVARが高能率・長寿命で削れるのがTR2F。ユーザーから見た、金型の長寿命化に寄与できる魅力は大きく、我々も拡販に力が入る」。
微細の世界へのアプローチは、顧客と同じ加工環境を整えることに腐心する。
「金型の加工現場に最も近い存在を目指してきた」実績をベースに、微細加工への取り組みに対しても「美彩(微細)加工室」を設置し、厳格な温度管理のもと、碌々スマートテクノロジー等の微細加工機を駆使したトライアルを重ねる。
「加工径が、φ1ミリを切ってくると、世界が変わってくると思う。たとえば、燃料電池セパレータ。1枚のプレートに溝幅の狭い加工が求められ、しかも高硬度。従来は小径で削れるボールタイプが活用されてきたが、能率、耐欠損性、耐摩耗性に配慮し、弊社ではラジアス工具『EHHRE-TH3mini』とラジアス工具では効果が発揮できない形状では『超硬を超える超硬』としてリリースしたボールタイプの『IXシリーズ』を提案している」。
IXシリーズは2月20日に発売され、cBN工具からのリプレースとして「高い勝率」を誇っているそうで「価格的なメリットに加え、工具寿命も伸びる」点が評価されている。
金型づくりで加工時間短縮により、加工費そのものを下げていく「PRODUCTION50TM 加工半減」、高精度加工のため、仕上げ工程だけでなく前工程を含むトータル工程での最適化を狙う「Hi‐Pre2」という、ものづくりに対する確固とした信念を抱くMOLDINO。その到達点は「美(鏡面)、速(時間)、深(深彫)、細(微細)、材(難材)、環(eco)」をキーワードに設定し、さらなる難削加工領域を目指していく。
寺井部長は、コーティング部門を振り出しに、タイやインドネシアに駐在したあと、社内外で技術サービスの提供に取り組んできた、大分県出身の50歳。
ギガキャストのコンセプトモデル