前期後半から回復傾向にシフト「新規大型案件が形に」―石川工具研磨製作所。顧客からの製造工具ニーズは「刃先の綺麗さ」

石川工具研磨製作所

石川工具研磨製作所

社内で新年の挨拶を行う石川社長

2020年4月からのコロナ禍への対応で、しばらく遠ざかっていた「リアル」対応が、昨年2023年5月から「解禁」された。
 「昨年を振り返って一番、印象に残ったのは、やはりコロナの5類への移行だった。思うように活動できなかった3年間は、やはり長かった、とつくづく感じている」。
 展示会が復活し、膝を交えた会話が花盛りの様相を呈したことも印象深いだろう。
 「昨年は、仕事の上では前半が自動車関連の落ち込みが引きずり、思うように伸びなかったが、後半に入ると、新規の大型案件が形になり、弊社にとっても回復の兆しが見え始めるようになった。この勢いが継続していけば、今期は、増収が期待できる」とする一方「とは言え、社内シェアの高い自動車関連の回復が鈍く、その他の引き合いは多かったものの、製作、再研磨ともに思うような新規開拓には結びつかなかった」との課題を残す。
 コロナ禍で再研磨需要は総じて、低迷した。
 「お客様からの要望としては、形状云々よりも、刃先の細かな、マイクロチッピングなどの要求が以前よりも上がってきている印象を受ける。言わば、刃先に、より綺麗さが求められるようになってきたと思う」とのニーズに触れながら「弊社としては、製作、再研磨の両面で、刃先の綺麗さを含め、提案内容のブラッシュアップを図ってきた。ただ、お客様の削る総量が減少しており、更なる需要を刺激するまでには至らなかったのも事実だ」。
 ところで、石川工具研磨製作所では、2022年5月から新工場稼働がスタートした。
 「高気密・高断熱の工場であることに加え、大型のろ過装置を導入したことで、室温・油温の振れ幅が小さくなり、稼働率向上に貢献できている」ほか「食堂を配置し、セミナーなどが開催できる広い会議室や図書コーナーなどを設けたことで、スタッフにとっての働きやすさの向上、学ぶ環境も一定程度、整えられて、次なるステップへの足がかりを得たと思っている」。
 人の育成、教育で注力しているポイントは何だろうか。
 「業務を遂行する上での教育や手順書の作成などは従来からの取り組みで達成できており、今後は、意識や行動という、自発性を促していけるような教育を実践していきたい。そのためには、個々人に合わせた指導とチェック、コミュニケーションは欠かせない」。
 2024年の幕が上がった。
 「景況の予想、予測は難しいものの、急激な回復はないとの判断に基づき、組み立てていきたい。新規エリア・業界の開拓、自社製品の改良等を課題に掲げ『拡大ではなく成長』に重きを置き、足元を固めてできることを増やしていけるようにしていきたい」。


石川社長の新年の年頭あいさつに聞き入る