機械づくりの基本は「セミオートマティック」。
高級腕時計業界の量産志向に対応へ(碌々産業・海藤社長)
海藤社長
微細加工機の需要動向を占うひとつの分野に、高級腕時計業界がある。
海藤社長は「たとえば、スイスの腕時計業界。職人の手仕上げによる複雑時計という付加価値は譲れないものの、量産への期待は高く、機械加工、特に微細加工機へのニーズの高まりを見せている」と語る。
今年の6月には、スイスのジュネーブで、時計、医療、微細加工部品の展示会として有名な「EPHJ」に碌々産業も出展。「微細加工機を駆使して、腕時計の最終仕上げ工程の負担をできるだけ軽減し、(高級腕時計の)量産を追求しようとする意欲の高さを改めて感じた」そうだ。
碌々産業に即せば、腕時計業界でのMEGA-3Sの納入実績が積み上がってきており、来年以降も、受注が見込めると言う。
余談ではあるが、腕時計メーカーにムーブメントを供給している「ETA」は、欧州腕時計市場では碌々ユーザーとしては、すでに「古株」になっている。
話を今期の歩みについて、海藤社長に水を向けると「上半期は、受注、売り上げともに計画通り達成する見込みとなる」ものの「部材の調達は引き続き、厳しい状況が続いている。なかでも、ボタン・スイッチ類の不足は深刻。また、ボールねじやコントロールユニットといった『大物』はまとめて発注して欲しいと言うニーズが発生してきている」そうだ。
とは言え、現下の好調な受注を背景に、2年先の2024年の生産計画がすでに埋まりつつある。生産を特徴づける、碌々産業の機械づくりの基本に据えられているのが、人の介在を前提とする「セミオートマティック」とも言える考え方だ。
「ロボットの活用や自動化システムの導入によって、全世界でスマートファクトリー化が展開されている、その流れとは逆に、人および人の育て方を重要視しながら、オペレータ―と機械が一体となる、MAOS(マシニング・アーティスト・オペレーション・システム)こそが、加工技術にイノベーションを引き起こすと我々は考えている」と言う。
碌々産業ではスマートファクトリー化に対応する一方で「加工技術者の感性に響くマシンづくり」を謳い、共鳴し合うことで、微細加工機のあるべき姿(R-Design)を展望する。
「JIMTOFでは、加工方法のイノベーションを提案していきたい。付加価値の創造は加工技術に革新が伴ってこそ。マシンは3台の出展を計画。腕時計の展示も行っていく」そうだ。
4年ぶりの開催となるだけに、出展者、来場者ともに「想定外の出会い」に期待できよう。微細化は精密化を伴い、高品位にも通じていく。今後も残っていくものづくりに違いない。