仙台工場で「精密微細5軸セミナー」開催-日進工具
「安定した、バラツキのない、高性能な製品の提供」が基本姿勢-後藤副社長

日進工具株式会社

日進工具株式会社

後藤副社長

日進工具は10月25日から27日の3日間、仙台工場の生産体制のリアルな見学を兼ねながら、5軸加工にフォーカスした、ユーザーを対象とする「精密微細5軸セミナー」を開催した。

 冒頭、後藤弘治社長は「ますます、高付加価値製品が求められ、(一部ではなく)各方面から微細加工ニーズが発生、要望されるなか、弊社としては、今後とも、こだわりを伴ったものづくりを追求していく方針だ」と挨拶。続いて、生産、開発を担当する後藤隆司副社長から、これまでの経緯をなぞりながら日進工具の特徴あるものづくりについて、詳細な説明がなされた。
 「安定した、バラツキのない、高性能な製品の提供が根幹を成す」との自社の基本姿勢を確認したうえで「A(あたり前のことを)B(バカにしないで)C(ちゃんとやる)」「公差ゼロに向けての挑戦」「見えない部分も大事にするものづくり」「改善には、終わりはない」といった、日進工具の、ものづくりの「いろは」に言及した。
 来年には創業70周年を迎える。
 小径の超硬エンドミルに特化したのは1994年からだが、当時、ヒット製品だった「パワーエンドミル」を廃番にしたことを記憶している方もいるかと思う。
 1990年頃から着手したロボットを駆使した工具の脱着、半自動包装システム、自動ロウ付けへの取り組みといった自動化を進めていく一方、2004年に6ミリ以下に絞って自社開発した工具測定器やコーティング膜の開発着手のほか、工具研削盤「TGM」の開発など、小径エンドミルの性能を深化させていくための、自前の設備・機器への取り組みを加速させていった。
 「2005年には刃径0・01ミリのマイクロエンドミルの量産化に成功する一方、シャンク精度にこだわり、公差0・002ミリへの挑戦と達成、小径エンドミルの機能を活かすCAD/CAMの考案、刃径公差2分の1への挑戦と達成・・・様々な課題を設定し、チャレンジし、その中で一定の成果を収めてきた」。
 工場案内では、シャンク精度のレンジ2マイクロメールの生産ライン、電力抑制を考慮した空調体制、棚に付けた転倒防止対策やベルトや金具で機器を固定するなどの地震対策の現状を見聞するとともに、最新の5軸加工機が設備されている、2019年秋にオープンした開発センターは、日本初となる免震装置に微振動対策ダンパーをあわせた「オールラウンド免震」を採用した建屋となっていることにも触れられた。
 「5軸マシニングセンタによる精密微細切削技術の最新動向」のテーマで講演した松岡代表(松岡技術研究所)は「5軸機の精度が格段に向上しており、切削時間の短縮をもたらすばかりか、5軸加工では刃数を増やせ、効率化に寄与していくとともに、最適な傾斜角の設定が行えることで『倒れがない』。シミュレーションで事前にチェックし、プログラムに落とし込んで切削加工をスタートさせる。ロボットの活用によるワーク着脱、機上計測といったツールも5軸加工に貢献する」とアピールされた。
 講演をはさみながらの後藤社長インタビューでは「EVシフトによって、ガソリンエンジン車の開発がストップしているが、EV化=エコは事実と違うとの認識も広がっている。ハイブリッドカーの増産が始まった。需要環境として、コロナ禍前の状況に戻って欲しいと思っている」との市況への期待とともに「標準化して在庫を充実させることが重要。テーパーエンドミルは、かつては標準品がなかった」「シャンクを基準にする工具づくり。この精度確保が出発点であり、この点を踏まえれば、1年後も、2年後も同じ精度の工具が手に入る」「高精度加工は5軸で可能になる→精密加工に対応。能率を上げていくためにも、5軸加工用工具の拡充を進めていく」との現状の確認、方向性に言及した。
参加したユーザーの半数近くが5軸加工機を駆使する現場からの参加だったと言う。

ハイエンドな5軸加工機のデモ加工とワークサンプルに見入る参加者
ハイエンドな5軸加工機のデモ加工とワークサンプルに見入る参加者