「駆け足で回った1年。肌で感じた興味深い業界」-羽賀社長就任1周年インタビュー。今年からの5年間で、EV化の方向性が見えてくる

株式会社東陽

株式会社東陽

羽賀威一郎社長

羽賀象二郎前社長が急逝し、2023年1月9日の東陽役員会で社長に選ばれた羽賀威一郎氏。「当面は既定路線を踏襲する」との方針で臨んだこの1年間をどのように振り返り、総括するのか。次代を見据えてもらいつつヒアリングを行った。

 「駆け足で回った1年だったが、興味深い業界だと感じた」と言う。
 東陽が向き合う客層は自動車業界であり、羽賀社長にとっては未経験の分野。しかも100年に一度と言われる変革期を迎えている。
 「トヨタ自動車は、2030年までに、EVの年間販売台数を350万台にすると発表している。色んな話が幾層にも重なり、進んでいくことが予想される。今年からの5年間は、まさに準備期間であり、このプロセスを通じて方向性も見えてくると思う」。
 ただ、当面はハイブリッドとEVとの「闘い」になるとの見方も示す。
 「たとえば、アメリカでは、特に中間層は、テスラなどのEV車を捉えて『お金持ちがステータスとして、セカンドカーとして購入する』と見ており、EVそのものの普及は簡単ではないと判断。事実、現状ではハイブリッド車が増産の方向で動いている。想定の話だが(EVシフトによって)自動車の部品点数が減少すれば、失業の可能性も高まってくるだろう」。
 また、EV生産を視野に入れる、車体部品を一体成形するギガキャストは、部品点数の大幅削減に期待がかかる一方「修理が大変で、バッテリーによって、重量も30%アップし、道路への荷重負担は避けられない」と指摘。さらに水素燃料エンジンの可能性については「究極のエコカーとも言われるが、1基5億円近くもする水素ステーションの整備となると、まだまだ、課題は多い」と見る。
 以上、自動車を取り巻く環境に言及してもらった。では、東陽を取り巻く足元の状況はどうか。
 「アイシングループが、加工そのものをティア2以下に再配分しており、トータルで切削工具の需要は拡大している。その一方で、大規模な設備投資は抑制され、今後の方向性が明確になるまでは、設備関連はレトロフィットで対応していく可能性が高く、この点を勘案すると、工作機械の動きは必然的に鈍くなってくる」。
 産業を問わず、ものづくりの世界で堅調に推移している需要は、自動化、省人化の流れ。
 「(顧客に対しては)システムとして、どのような仕事をさせるか。特に人手不足を反映した、省人化提案が重要になってくるだろう」と予想する。
 拠点を設けている海外に視線を移してもらうと「アメリカにとってのメキシコ、タイにとってのインドネシアといった、それぞれの地位が向上し、需要も高まってきている。チェコも順調で、総じて海外はポテンシャルが高い。ただ、中国は現地調達の比率がますます高まってきており、厳しさが増してきている。インドも同様だ」そうだ。
 今期もあと残すところ第4四半期のみ。
 「4月~12月は、前年同期比プラスで推移し、計画もクリアしている。顧客の仕事量も増え、全体的に需要が拡大した結果だと判断している」。
 3月21日、22日には昨年に引き続き、プライベートショーを開催する。自動化、省人化が、やはりキーポイントになってくるだろう。
 「直接の顧客であるアイシングループは、組織変更を進めている。購買のあり方も変わってくるものと予想され、弊社としては、一つの部署に留まらない、横断的な対応の強化が必要になると思う。4月以降、機構改革を行い取り組んでいきたい」。