イスカル本社訪問(連載第一回)
FCDメンバーおよび、そのユーザーで構成。インダストリー4・0採用し、工場はほぼ無人で稼働

イスカルジャパン株式会社

イスカルジャパン株式会社

参加者一行に歓迎のあいさつを行うイスカルジャパンの岡田代表

テルアビブやエルサレムに加えて、イスラエルには「テフェン」と言う地がある。7月15日~7月21日にかけて、イスカルジャパン(岡田代表取締役)によるイスラエル本社訪問ツアーが実施され、参加したFCD(ファースト・クラス・ディーラー、全国の販売上位特約店)及びそのユーザーの脳裏に、これまで聞き慣れなかった地名が刻まれた。本紙も招待いただくなか、8月号から10月号の3回に分けて、このツアーの連載を企画。世界第二位の地位を占める総合切削工具メーカーの背景にある哲学とでもいうべき、諸相を織り込みながら、トップの考え方やセミナー、施設見学等を通じて、等身大のイスカルに迫ってみることにした。

 まず、原点を辿ってみよう。
 イスカルという社名の由来は「イスラエルのカーバイド」。1952年の創業で、創業者の名はステフ・ベルトハイマーと言う。幼少の頃、ナチスドイツの手を逃れ、1936年、家族とともにイギリス統治下のパレスチナに移り住んだ。当時、イスラエルは、まだ、建国に至っておらず、18歳になると初期のイスラエル空軍に志願して入隊。パイロットとしての訓練を積む日々だったが、軍はステフ氏にもうひとつの才能を見出していた。
 それは金属加工に関わる才能であり、製造部門で頭角を現したのだ。イスラエル建国を成し遂げ、独立戦争終結とともに、ステフ氏は自宅の裏庭に金属加工用の切削工具をつくる「あばら小屋」を建てた。これが言わばイスカル社の原型となった(因みに創業者は今も健在で御年97歳)。
 以降、ステフ・ベルトハイマー一族による家族経営で成長、発展を遂げ、切削工具メーカーとして、世界第二位の地位に上り詰めた。現在、全世界で7000人の従業員を抱えるイスカル社は、IMCグループ(インターナショナル・メタルワーキング・カンパニーズ)を構成する13社の中で、トップブランドであり、最大手である。2006年には、世界的な投資家で知られるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーに認められ、同社が80%の株式を取得、その後2013年には100%の株主となった。この大型投資により、業界の枠を超え、将来性のある優良企業としての評価を獲得した。
 CEOを務めるイラン・ゲリ氏は「我々はINNOVATION NEVER STOPS(限りない技術革新に挑戦)を掲げ、製品に留まらない、価値を提供することによって、その精神を体感頂ければと考えている。究極の目標は、お客様に『付加価値』をお届けすること、これに尽きる」と明言する。イラン・ゲリ氏は入社32年になる、生え抜きのトップだ。
 イスカル社の需要動向への対応、開発・製造の現状や方向性については、メイール・ノイバウアー事業開発部長のセミナーでの言葉を借りよう。
 「インダストリー4・0を採用している当社製造工場は、ほぼ無人で稼働しており、製造される切削工具は、自動車、金型、鉄道、医療、航空機といった産業に、世界50以上の販売拠点を通じて、安定供給されている。産業別、加工ワーク別のソリューション提供に特化した、スペシャリストの育成に心血を注いでいる」と言う。
 また、工具設計の柔軟性を高めていくために「3Dプリンタによる製造を推進。内部クーラント工具が一例で、的確に被削材にクーラントを供給する経路を自在に形づくることを可能にするばかりか、従来比2倍以上の長寿命化にも寄与する」メリットは無視できない。
 数百人に及ぶ技術者集団を抱えるが、なかでも、旧ソ連が崩壊した際、多くの優秀なロシア系技術者の受け皿として、イスカルが機能したことは特筆に値しよう。R&Dと言う括りで見れば、研究開発への投資は年間売り上げの4%~5%に及ぶ。
 最新の工具についてもここで触れておく。2021年発表の「NEOLOGIQ」シリーズは、この2年間で30製品以上が市場に投入された。その中から、特徴的な最新工具を数点紹介する。
 業界初の3枚刃、ヘッド交換式ドリル「LOGIQ3CHAM」、金型製造向けの低抵抗高送りカッタ―「LOGIQ4FEED」、超高送りを可能とする突切加工用「LOGIQFGRIP」、自動盤用クイックチェンジの「NEOSWISS」など、これまでの常識に囚われない、ユニ―クな形状が特徴的だ。
 全世界への滞りない供給と言う点で、重要な位置を占める中央物流センターだが、昨年増設され、今年1月から稼働がスタートした。
 中央物流センターの幹部によると「将来に備え、十分な収容スペースを確保した。本社敷地内には、30近い製造工場が配置されており、製造された全ての製品は、この中央物流センターに集約される。また、物流業界最先端の技術を導入し、自動化と効率化をとことん追求したことで、従来1日で処理していた量を、現在は1時間で処理する。ピックアップすべき製品の入ったボックスが出荷スタッフの前に流れて来るが、コンベアも効率性を追求し『ボックスが人を待つ。逆ではない』仕組みを備える」。

 連載1回目は以上となる。2回目以降の9月号、10月号では、革新工具へのアプローチとその具体例、特殊対応の現状などについて、触れていく計画だ。

イスカル本社に到着後、記念撮影
イスカル本社に到着後、記念撮影

イラン・ゲリCEO
イラン・ゲリCEO

多種多様な製品を手にする参加者
多種多様な製品を手にする参加者