発電用タービンブレード加工でアドバンテージ。ZOLLER製venturion導入の香林鉄工所(石川県かほく市)

株式会社 香林鉄工所

株式会社 香林鉄工所

香林社長(右)と北専務

旋盤加工で1961年に産声を挙げた香林鉄工所は、1985年ごろに、三菱重工・高砂工場のパートナー企業である豊栄鉄工の外注加工先となり、発電用のタービンブレード加工で、研鑽を重ね、実績を積み上げてきた。
 香林千惠美社長は「OKKの横形マシニングセンタの導入による巡り合わせの中で、協力工場の1社となり、蒸気タービンブレードの、角材からの削り出しでスタートさせて頂くことになった」との経緯を語る。
 それまでは、繊維機械のシャフト加工に代表される、旋削加工を数多く手がけ、石川県内で初めてNC旋盤(森精機)を導入した企業としても知られる。
 現場を統括する北専務によると「その頃のタービンブレードは、工程別に外注先が分かれており、弊社は、前加工でスタート後、動翼の第一工程となる、植え込み部の加工を担うことになった」。
 タービンの列ごとにブレード(翼)が付けられ、多い時で1列に120枚が取り付けられると言う。
 香林社長は「その後、品質、コスト、納期が認められるにつれ、次第に他の工程の受注にも繋がっていき、やがてガスタービンの圧縮機動翼、静翼へと、タービンブレードの全加工が任されるようになった」との事業拡大に触れた。
 発電用タービンは、蒸気やガスを当てることで回転軸が回り、電気の発生を促す仕組みだが「タービンブレードの加工でポイントとなるのが翼面で、5ミリ未満の薄肉に加え、形状は自由局面。保持する治具の考案抜きには、まともにクランプすることもできない」難しさばかりか「求められる公差は+-数十ミクロン以内」(以上、北専務)と精緻を極める。
 香林鉄工所では、建機の足周りや変圧関連、船舶などの部品加工も請け負うが、タービンブレード加工は、量の上でも社内シェア5割以上を占める「看板加工」に発展している。
 タービンブレードの加工を手がけるようになっておよそ35年、材質の微妙な変化ばかりか、形状が次第に複雑化し、要求される精度も上がってきた。
 「2015年から、タービンブレード加工を担ってきた設備の更新に着手。2021年にはDMG森精機のDMU85monoBlock、牧野フライス製作所のa81nx(18パレット)の2台を相次いで導入し、既設のDMG森精機とOKKのマシニングセンターも合わせた8台を駆使し、新たに取り組み始めた」ちょうど、この時期に、ZOLLER製ツールプリセッター「venturion」との出会いが重なってくる。
 「新規設備したタイミングで、ZOLLER Japanさんを訪問し、ヒューマンエラーの解消やDXの流れ、さらにはスマートファクトリー化等の相談に乗って頂き、その経緯でventurion450の導入に踏み切った」(米澤統括リーダー)そうだ。
 今年1月から、社内LANで前述の8台の設備に繋ぎ、測定のプログラミングを行って、工具長や工具径といった測定データを転送。外段取りのため、機械を止めなくてもよいので稼働率向上に直結するばかりか「精度が要求される翼面の加工で、不良率ゼロを達成した」と米澤統括リーダー。
 さらにタービンブレードの加工では特殊工具の使用頻度が高いが「特殊カッタの形状を加工前に把握できることのメリットは大きい」とする一方「工程計画が容易に組めるようになったほか、従来のツールプリセットの手作業がなくなり、作業者がストレスから解放された」と総括してくれた。

米沢統括リーダー(左)とオペレーターのクインさん
米沢統括リーダー(左)とオペレーターのクインさん