円高シフトで、日系メーカーによる海外再注力に備えるサンアロイ工業。アジア全般のネットワーク網整備へ
山本誠司社長
サンアロイ工業の山本誠司社長を訪問した。
「アメリカ大統領選挙や、国内では参院選挙を控える節目の政局を前に、諸要素が絡み合って円高シフトが進んでいくと予想している。内需の減少も重なり、ここ数年の円安による製造業の国内回帰から、今後、再び国内メーカーによる海外への再注力、特に工場移転が予想されるだけに、当社のアジア全般のサービスネットワーク網の再構築に取り掛かっている。最大の目標は短納期対応にあり、年内までに体制を整えていく」考えだ。
ロジスティック機能の拡充、在庫の配分をにらんだ対応も、当然、考慮に入れられている。
新製品の開発にも余念がない。従来の超硬合金に「低摩擦化能」を付与したPシリーズは、今や量産型の全製品に適用が可能となり、「形状や精度の問題でコーティングが困難なものに対しても対応が可能になって」、材種の特長を生かしながら、長寿命化が図れるメリットをユーザー間で享受できるようになっているようだ。
Pシリーズの量産体制が整ってきたことで、これまでは国内市場優先であった供給体制を、今後は海外ユーザーへも供給を拡大する予定だ。
新たな超硬合金の市場浸透は、一般的には緩慢な動きにもかかわらず「耐摩耗性、耐焼き付き性に優れているため、特に寿命については、好評を得ている」成果をものにしている。
引き続き、経営課題としては、「近年発生が予想される東南海地震など自然災害に備えることが重要」、としつつ、阪神淡路大震災、東日本大震災や、タイ大洪水など災害時の経験を踏まえ、生産は1工場への集中をさけ、国内外の複数工場へ分散し、加えて、国内外協力工場との標準化を進めてきたとのことで、災害時にも、サプライチェーンを維持する体制づくりが進んでいると話す。